2026年 予備試験 論文式 租税法 第1問
問題
配点 50点[租 税 法]
株式会社X(以下「X社」という。)は、毎年10月1日から翌年9月30日までの期間を事業年度とする内国法人である。X社の取締役は、令和4年10月1日から令和5年9月30日までの事業年度(以下「令和5年9月期」といい、他の事業年度も同様に表記する。)から令和7年9月期までを通じて、代表取締役社長A、取締役B及び社外取締役Cの3名であった。X社は同族会社に該当せず、A、B及びCは、いずれもX社の株式を保有していない。
令和5年11月26日、X社の令和5年9月期の定時株主総会が開催され、X社の取締役(同日をその職務執行開始日とする。)に対して支給する役員給与の年間総額を5500万円の範囲内と定め、具体的な支給額はX社の取締役会に一任することが決議(以下「本件総会決議」という。)された。本件総会決議を受け、同日に開催されたX社の取締役会において、以下のとおり役員給与を支給することが決議された。
① 毎月末に、Aに対して180万円、Bに対して140万円を、それぞれ支給する。
② 3月末日及び9月末日に、Cに対して各100万円を支給する。
③ 12月10日及び6月10日に、Aに対して各500万円、Bに対して各200万円の冬季賞与及び夏季賞与を、それぞれ支給する。
なお、以上の役員給与に係る各金額は、いずれも従前どおりであった。
その後、X社は、A及びBに対して、毎月末に上記①のとおり役員給与を支給するとともに、令和5年12月10日に上記③のとおり冬季賞与を支給し、同月22日、A及びBに対する冬季賞与及び夏季賞与につき、所轄税務署長に対し、法人税法第34条第1項第2号イの届出(以下「本件届出」という。)を行った。他方、X社は、令和6年3月末日及び同年9月末日、Cに対して上記②のとおり役員給与を支給したが、所轄税務署長に同様の届出を行わなかった。
令和6年6月1日に開催されたX社の臨時株主総会において、業績の著しい悪化を理由に、Aに対する夏季賞与を250万円、Bに対する夏季賞与を100万円にそれぞれ減額することが決議(以下「本件減額決議」という。)された。X社は、同月10日、本件減額決議に従い、A及びBに対して夏季賞与を支給したが、所轄税務署長に本件届出の内容を変更する旨の届出(以下「本件変更届出」という。)を行ったのは、経理担当者の多忙により、同年7月20日になった。X社は、令和6年9月期の所得の金額の計算上、実際に支給した役員給与の額を損金に算入した上で、法人税の確定申告を法定の期限内に行った。
Aは、十分な資力を有しながらも、本件減額決議に対する不満が動機となり、令和7年7月、A及び経理担当職員が管理している金庫から、150万円の現金を横領した。同年9月、この横領事実が発覚し、X社は、被害金額を A から回収しようと真摯に試みたが、Aと連絡がとりづらく、同年12月末日までには全く回収することができなかった。X社は、令和7年9月期の所得の金額の計算上、150万円を損失の額として損金に算入し、法人税の確定申告を法定の期限内に行った。なお、Aは、令和7年分の所得税の確定申告において、横領した150万円をAの所得の金額の計算に含めていない。
以上の事案について、以下の設問に答えなさい。解答に当たっては、理由を付し、根拠条文がある場合はそれを明記しなさい。ただし、租税特別措置法の適用は考慮しないものとし、事案中の年月日にかかわらず、令和8年1月1日現在において施行されている法令に基づいて解答しなさい。
〔設問〕
1 X 社の役員給与に関し、以下の各問いに答えなさい。なお、X社に生じた業績の著しい悪化は、法人税法施行令第69条第5項第2号の業績悪化改定事由に該当するものとする。
⑴ X社が、令和5年中に行った本件届出と、令和6年中に行った本件変更届出は、それぞれ法定の期限内に行われたものといえるか。それぞれ期限となる日を具体的に示して述べなさい。なお、曜日及び祝日は考慮しないものとする。
⑵ X社は、令和6年9月期中にA及びBに対して支給した役員給与の額を、令和6年9月期の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができるか。法人税法第34条第1項第2号の趣旨を説明しつつ論じなさい。
⑶ X社は、令和6年9月期中にCに対して支給した役員給与の額を、令和6年9月期の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができるか。
2 Aがした横領に関し、以下の各問いに答えなさい。なお、X社の株主総会決議に基づく役員給与との関係を考慮する必要はなく、また、税額の具体的な計算は要しない。
⑴ 所轄税務署長が、法人税に関し、X社に対して行う可能性のある処分の名称を挙げた上で、その処分を行うべきか否かについて、その処分を行うべきとする立場と行うべきでないとする立場からそれぞれ簡潔に論じなさい。
⑵ 横領した150万円につき、Aに所得税が課されるか。仮に課されるとすれば、どの種類の所得とされるかについても論じなさい。
⑶ 所轄税務署長が、所得税及び加算税に関し、X社に対して行う可能性のある処分とその適否について論じなさい。所得税に関しては、納税義務の成立と確定の時期についても言及しなさい。
(参照条文)法人税法施行令
(定期同額給与の範囲等)
第69条
1~3 (略)
4 法第34条第1項第2号イに規定する届出は、第1号に掲げる日((中略)。第7項において「届出期限」という。)までに、財務省令で定める事項を記載した書類をもつてしなければならない。
一 株主総会等の決議により法第34条第1項第2号の役員の職務につき同号の定めをした場合における当該決議をした日(同日がその職務の執行の開始の日後である場合にあつては、当該開始の日)から一月を経過する日(同日が当該開始の日の属する会計期間開始の日から四月(括弧内省略)を経過する日(以下この号において「四月経過日等」という。)後である場合には当該四月経過日等とし、新たに設立した内国法人がその役員のその設立の時に開始する職務につき同条第1項第2号の定めをした場合にはその設立の日以後二月を経過する日とする。)
二 (略)
5 法第34条第1項第2号に規定する定めに基づいて支給する給与につき既に前項又はこの項の規定による届出(以下この項において「直前届出」という。)をしている内国法人が当該直前届出に係る定めの内容を変更する場合において、その変更が次の各号に掲げる事由に基因するものであるとき(第2号に掲げる事由に基因する変更にあつては、当該定めに基づく給与の支給額を減額し、又は交付する株式(出資を含む。以下この条において同じ。)若しくは新株予約権の数を減少させるものであるときに限る。)は、当該変更後の法第34条第1項第2号イに規定する定めの内容に関する届出は、前項の規定にかかわらず、当該各号に掲げる事由の区分に応じ当該各号に定める日(第7項において「変更届出期限」という。)までに、財務省令で定める事項を記載した書類をもつてしなければならない。
一 (略)
二 業績悪化改定事由 当該業績悪化改定事由によりその定めの内容の変更に関する株主総会等の決議をした日から一月を経過する日(当該変更前の当該直前届出に係る定めに基づく給与の支給の日(当該決議をした日後最初に到来するものに限る。)が当該一月を経過する日前にある場合には、当該支給の日の前日)
6 (略)
7 税務署長は、届出期限又は変更届出期限までに法第34条第1項第2号イの届出がなかつた場合においても、その届出がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該届出期限又は変更届出期限までにその届出があつたものとして同項の規定を適用することができる。
8~21 (略)
出典:法務省「2026年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。