司法試験論文式過去問演習

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2026年 予備試験 論文式 国際関係法(公法系) 第1問

問題

配点 50点

[国際関係法(公法系)]

以下のA国ないしG国は、いずれも条約法に関するウィーン条約及び海洋法に関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」という。)の当事国である。

A国は、従来は、自国の海岸の低潮線をもって領海の幅を測定するための基線とした上で、基線から3海里までを領海としていたが、国連海洋法条約を批准する際に、領海の幅を基線から12海里に変更した。それから10年後に、A国は国内法を改正し、領海の幅を測定するための基線を引くに当たって、直線基線の方法を用いるとともに、「A国の直線基線の陸地側の水域において、外国船舶は、A国の許可がなければ通航することができない。」と規定した。従来、多くのB国の船舶が、A国が新たに引くこととした直線基線の陸地側の水域を通航してきたことから、B国の外務大臣は声明を出し、「国連海洋法条約上、A国が直線基線を引くことは認められるとしても、A国の許可がなければ直線基線の陸地側の水域を通航することができないとすることは、国連海洋法条約に違反する。」と主張した。

C国は、基線から、12海里までを領海、200海里までを排他的経済水域としている。C国を旗国とする船舶Pが、C国からD国に向かって航行していたところ、E国に拠点を置き、構成員の全員がE国国民である犯罪集団Zが使用している船舶Qが、船舶Pに接近してきた。船舶Qは、いずれの国の国籍も有さず、また、いずれの国の国旗も掲げていない。船舶Qに乗っていたZの構成員甲は、C国の基線から90海里の水域αにおいて、船舶Pに乗り移り、自動小銃を発射して船舶Pの船長を殺害するとともに、船舶Pの乗客が所持していた金品を奪い、船舶Qに戻った。この事件が発生した頃、D国の軍艦Rが、水域αの近くを航行していた。

向かい合う海岸を有しているF国とG国は、それぞれ基線から200海里までを自国の排他的経済水域及び大陸棚と主張しているが、両国の基線間の距離は400海里に満たないため、長年にわたり、両国間で排他的経済水域及び大陸棚の境界画定交渉が行われてきた。F国内で交渉会合が開催された際、F国の大統領Xは、F国を訪問していたG国の元首である大統領YをF国の軍事警察によって取り囲ませ、「両国の排他的経済水域及び大陸棚の境界線として、F国が主張する境界線を受け入れることに合意するβ条約にこの場で署名しなければあなたの生命はない。」と脅し、Yは、他に選択肢はないと考えてβ条約に署名した。β条約には、「この条約は、両国の大統領の署名により効力を生ずるものとする。」と規定されていた。G国憲法において、条約の締結は大統領の権限とされているが、領土及び海洋の境界画定に関する条約については、「事前に議会の承認を経ることを必要とする。」と規定されている。YがG国に帰国した後でF国がβ条約の締結を発表したところ、G国は、F国に対して、β条約は無効であるとする見解を伝えた。

以上の事実を基に、以下の設問に答えなさい。

〔設問〕

1.B国の外務大臣は、どのようなことを根拠として、「A国の許可がなければ直線基線の陸地側の水域を通航することができないとすることは、国連海洋法条約に違反する。」と主張したと考えられるかについて論じなさい。

2.国連海洋法条約上、D国が、海賊行為を理由として、水域αにおいて軍艦Rによって船舶Qを拿(だ)捕し、甲を逮捕することができるかどうかについて論じなさい。なお、水域αがC国の排他的経済水域内にあることについては、いずれの国からも異議は出されていない。

3.G国は、国際法上どのような根拠に基づいて、β条約は無効であると主張することが考えられるかについて論じなさい。

出典:法務省「2026年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。