司法試験論文式過去問演習

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2026年 予備試験 論文式 憲法 第1問

問題

配点 50点

[憲 法]

近時、子どもの貧困が社会問題化する中、子どもが1人でも行ける無料又は低額の食堂である「子ども食堂」を運営するNPO法人やボランティア団体が増えている。一方で、物価の高騰が続いている中、子ども食堂の運営費や食材費の不足が問題となっている。そこで、A市では、子ども食堂支援事業補助金交付要綱(以下「要綱」という。)を作成して、貧困対策や子育て支援政策の一環として、子ども食堂を運営する団体に対し、毎年度、補助金(以下「本件補助金」という。)を交付することにした。

本件補助金の交付対象となるのは、A市内で子ども食堂を運営している法人その他の団体である。A市は、従前から子ども食堂を運営してきた団体が市内に複数あるため、本件補助金の交付対象として、それらの団体を念頭に置いていた。本件補助金の交付を受ける団体は、市長に対し、本件補助金の交付申請に当たり事業計画書及び収支予算書を提出する必要があるほか(要綱第4条)、補助対象事業が完了したときは事業報告書、事業収支決算書等を提出する必要がある(要綱第6条)。また、市長は、本件補助金の交付を受ける団体に対し、必要な報告を求め、又は書類、帳簿等の検査を行うことがある(要綱第7条)。しかし、それらの団体は、A市の行政組織の一部ではなく、自主的に組織・運営されている私的団体であり、A市がその活動に対して指示をしたり、その人事に関与したりすることはない。

ところで、子ども食堂を運営する団体の中には、選挙期間中であるか否かを問わず、その団体名を示して、子育て支援に積極的な公約を掲げている公職の候補者や政党を応援してきた団体がある。A市としては、このような団体に本件補助金を交付することは、あたかもA市が当該候補者や政党を支援しているかのような誤解を与えかねず、特に子ども食堂を利用する子どもの保護者に対し、その投票に関する意思決定に影響を与えるおそれがあると考えた。そこで、要綱上、本件補助金の交付を受ける団体には、特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦するなどの行為を禁止し(要綱第8条第1号)、違反があった場合には本件補助金の交付決定の取消しと返還命令の対象となる(要綱第9条第3号)ものとした。

他方、宗教団体が子ども食堂を運営する場合について、要綱上、宗教団体も本件補助金の交付対象から排除されていない。例えば、宗教法人B寺が運営する子ども食堂は、次のようなものである。まず、子ども食堂は、子どもの保護者がB寺の檀家であるか否かにかかわらず、誰でも利用することができる。子ども食堂は、B寺の敷地内にある集会施設を使用しているが、当該集会施設は、本堂のような宗教施設そのものではなく、一般的な集会施設と変わるものではない。ただし、食事をする部屋の壁には、B寺の住職が仏典から引用した仏の教えや人生の導きとなるような名言や標語が掲示されている。提供される食事は、特に宗教の教義に沿ったものではなく、食事の際には、手を合わせて、「いただきます。」、「ごちそうさまでした。」という挨拶をするよう指導がなされているが、それ以上に、食事の前後にお祈り等をすることもない。子どもやその保護者に対してB寺が主催するお祭りその他の宗教行事の案内がなされることがあり、これら行事への参加は子ども食堂を利用するための条件ではないが、子ども食堂を利用する子どもやその保護者の約半数が参加している。A市内には、このようなB寺と同様のやり方で子ども食堂を運営するキリスト教の教会などの宗教法人が複数あり、A市としては、それらのいずれも本件補助金の交付対象とする予定である。

この要綱の取りまとめに携わったA市の担当者は、この要綱に関わる憲法上の問題について意見を求めるため、法律家のもとを訪れた。

〔設問〕

あなたが意見を求められた法律家であるとして、以下の⑴から⑶までについて、あなた自身の見解を述べなさい。その際、必要に応じて参考とすべき判例に言及しつつ論じること。

⑴ 私的団体に対して本件補助金を交付することの合憲性

⑵ 本件補助金の交付を受ける団体に対し、要綱第8条第1号に定める行為を禁止することの合憲性

⑶ B寺に対して本件補助金を交付することの合憲性

【資料】A市子ども食堂支援事業補助金交付要綱(抄)

(補助金の交付の申請)

第4条 補助金の交付を受けようとする団体は、補助金交付申請書に次に掲げる書類を添えて、別に定める日までに市長に申請するものとする。

一 事業計画書

二 収支予算書

(補助金の交付の決定)

第5条 市長は、前条の書類を受理した場合において適当と認めるときは、補助金の交付を決定し、当該申請団体に対し書面により通知する。

(実績報告)

第6条 補助金の交付を受ける団体(以下「補助団体」という。)は、補助対象事業が完了したときは、次の各号に掲げる書類を市長に提出するものとする。

一 事業報告書

二 事業収支決算書

三 その他市長が必要と認めたもの

(報告徴収及び検査)

第7条 市長は、補助団体に対し、随時、必要な報告を求め、又は書類、帳簿等の検査を行うことができる。

(禁止事項)

第8条 補助団体は、次に掲げる行為をしてはならない。

一 特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対すること。(第2号以下略)

(交付決定の取消し等)

第9条 市長は、補助団体が次の各号のいずれかに該当するときは、補助金の交付決定の全部又は一部を取り消し、既に交付した補助金の全部又は一部の返還を命ずることができる。

一 虚偽その他不正な手段により補助金の交付決定を受けたとき

二 補助金を補助対象経費以外の用途に使用したとき

三 前条各号に掲げる行為があったとき

出典:法務省「2026年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。