司法試験論文式過去問演習

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2025年 予備試験 論文式 租税法 第1問

問題

配点 50点

[租 税 法]

A社は、不動産管理・仲介を業とする株式会社であり、暦年を事業年度としている。A社は、令和元年11月1日、甲マンションの1室(以下「甲1不動産」という。)を、個人Bから7000万円で購入し、引渡しを受けた。甲1不動産の時価は、8000万円程度であったところ、Bは、金策のために甲1不動産の売却を急いでおり、これまで付き合いがなかったA社から対価7000万円一括払いでの購入を提示されたので、これに同意したという事情があった。

個人Cは、会社役員として高額の報酬を得ながら、余裕資金を活用して、中古マンションの1室単位で物件を購入して賃貸に供するという収益不動産への投資を行っており、A社に投資物件を紹介するよう依頼していた。A社は、令和元年12月1日、Cとの間で、甲1不動産を時価相当額である8000万円で譲渡する契約を締結した(なお、A社は、甲1不動産をBから購入した後、事業の用に供していなかった。)。当該契約に従い、Cは、同月20日、A社に対し、売買代金の一部として3000万円を支払い、残代金債権を被担保債権とする抵当権を甲1不動産に設定し、A社から甲1不動産の引渡しを受けた。Cは、令和2年1月以降、甲1不動産を個人Dに賃貸し、毎年480万円の賃料収入を得ていた。Cは、同年12月1日に、売買残代金5000万円の支払を完了し、甲1不動産の抵当権の抹消登記手続を了した。

また、Cは、令和2年6月30日、賃貸用に乙マンションの1室(以下「乙1不動産」という。)を時価相当額である4000万円で購入した。同年8月以降、乙1不動産には、継続的に賃借人が入居している。

Cは、令和2年末には、甲1不動産及び乙1不動産を含む4室の賃貸物件を所有するようになり、賃貸物件の管理の手間が増えたため、令和3年以降、これら全ての物件に係る管理業務の一切をA社に委託し、4物件分をまとめて年200万円の管理委託費を支払っていた。なお、各物件の賃料は、各物件の賃貸借契約に従って、賃借人から、Cの銀行口座に直接払い込まれていた。

Cは、成人して収入の無いCの子Eに不動産賃貸ビジネスを経験させるとともに、所得税額の軽減効果を得ようと考え、令和3年12月1日、Eとの間で、甲1不動産に関し、下記①及び②を内容とする契約(以下「本件契約」という。)を締結した。

① 令和4年1月1日から令和5年12月31日までの2年間(以下「本件契約期間」という。)、Cが承諾した第三者(Dを含む。)の居住の用に供するために、Cは、Eに対し、甲1不動産を無償で貸し渡す。

② Cは、Dの承諾を得て、本件契約期間中、Eに対し、甲1不動産に係るC・D間の賃貸借契約に基づく賃貸人の地位を移転する。

Cは、上記②に係るDの承諾を得た上で、Eと連名で、Dに対し、本件契約期間中の賃料払込先としてEの銀行口座を指定する旨を通知し、本件契約期間中、甲1不動産の賃料は、Eの銀行口座に払い込まれていた。なお、甲1不動産の管理委託費は、本件契約期間中も、従前どおり、他の物件の管理委託費と共に、CがA社に支払っていた。本件契約は、その約定どおり、令和5年12月31日に終了した。

令和6年1月、乙マンションの外壁に亀裂が見つかり、点検を行った結果、建物自体が劣化し、倒壊の危険があることが判明したため、乙マンションは、急きょ取り壊されることとなった。同年3月末までに入居者の退去が完了し、同年6月末には解体工事が完了した。Cは、区分所有者として解体費用300万円を負担することとなり、同年7月にその支払を完了した。区分所有者間では、乙マンションの解体後の跡地を売却するか、新たなマンションを建設するかについて協議が難航したが、最終的に、跡地を売却する旨の合意が令和7年1月に成立した。

以上の事案について、以下の設問に答えなさい。解答に当たっては、理由を付し、根拠条文がある場合はそれを明記しなさい。ただし、租税特別措置法の適用は考慮しないものとし、事案中の年月日にかかわらず、令和7年1月1日現在において施行されている法令に基づいて解答しなさい。

〔設問〕

1 A社が、甲1不動産をBから購入し、Cに譲渡したことは、A社の各事業年度の所得の金額の計算において、どのように取り扱われるか。

2 以下の各問に答えなさい。ただし、本件契約の有効性は争点とならないものとして解答すること。

(1) 所得の人的帰属に関する所得税法上の原則について論じなさい。

(2) Cは、令和4年及び令和5年分の確定申告において、甲1不動産からの賃料収入は自らに帰属しないものとして扱おうと考えている。上記(1)での解答を踏まえつつ、Cの立場に立って、このような扱いを正当化する主張を行いなさい。

(3) 上記(2)のCの主張に対して、所轄税務署長の立場から考えられる主張を行いなさい。

3 令和6年において、Cには、保有する全4室の賃貸物件について、総額1200万円の賃料収入があり、管理委託費や租税、減価償却費等の諸経費(ただし、下記(1)及び(2)に係るものを除く。)を控除した金額である400万円の所得があったものとする。このとき、以下の各問に答えなさい。

(1) Cが負担した解体費用300万円は、所得税法上どのように取り扱われるか。解答に際しては、近い将来、Cら区分所有者が乙マンションの跡地を売却した場合、譲渡所得上の譲渡費用に該当するかについても検討しなさい。

(2) 令和6年6月末に完了した乙マンションの取壊しは、Cの同年分の所得税の確定申告において、どのように取り扱われるか。ただし、Cが支払った乙1不動産の購入代金4000万円のうち、建物部分の対価は1000万円であったものとする。また、Cが乙1不動産を取得した日から取壊しの日までの期間に、所得税法第49条第1項の規定により必要経費に算入される乙1不動産の償却費の額の累積額は、150万円であったものとする。

(参照条文)所得税法施行令

(必要経費に算入される資産損失の金額)

第142条 次の各号に掲げる資産について生じた法第51条第1項、第3項又は第4項(資産損失の必要経費算入)に規定する損失の金額の計算の基礎となるその資産の価額は、当該各号に掲げる金額とする。

一 固定資産 当該損失の生じた日にその資産の譲渡があつたものとみなして法第38条第1項又は第2項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)の規定を適用した場合にその資産の取得費とされる金額に相当する金額

二 山林 当該損失の生じた日までに支出したその山林の植林費、取得に要した費用、管理費その他その山林の育成に要した費用の額

三 繰延資産 その繰延資産の額からその償却費として法第50条(繰延資産の償却費の計算及びその償却の方法)の規定により当該損失の生じた日の属する年分以前の各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入される金額の累積額を控除した金額

出典:法務省「2025年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。