司法試験論文式過去問演習

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2025年 司法試験 論文式 労働法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

次の事例を読んで、後記の設問に答えなさい。

【事 例】

Y社は、菓子、米飯及び総菜の製造並びに販売を業とする従業員数約400名の会社である。Y社には、その従業員により結成された労働組合(以下「X組合」という。)があり、組合員数は80名である。

Y社の主たる製品は、同社構内にある工場で、3交替勤務24時間操業の体制で製造されている。工場の製造ラインは、菓子ライン、米飯ライン、総菜ラインの3つに分かれており、それぞれのラインに各交替勤務(シフト)ごとの現場監督者がいる。現場監督者は、係長の職位にあり、使用者の利益代表者とされておらず、組合員となる資格を有している。現場監督者は、管理職であって組合員となる資格を有しない工場長を直接に補佐する立場にあり、担当ラインの従業員を取りまとめ、必要に応じて、工場長からの指示を担当ラインの従業員に伝える役割を担っている。

Y社における冬季一時金はこれまで基本給の0.5か月分程度であったが、X組合は、令和6年冬季一時金要求について、近時の急激な物価上昇を踏まえ、組合員の収入を大幅に引き上げるべく、基本給の1.25か月分を要求することにした。X組合は、同年11月8日、Y社に対して冬季一時金要求書(以下「本件要求書」という。)を提出した。

なお、X組合は、Y社の抵抗を予想して、本件要求書提出以前に組合総会を開催し、Y社の回答が基本給の1か月分に満たない場合はストライキを行うことを決定していた。

令和6年11月13日、Y社とX組合は冬季一時金について第1回団体交渉を開催した。Y社は従来どおりの0.5か月分支給案を提示し、X組合は1.25か月分を要求した。X組合の要求を聞いたY社の交渉担当者は、「検討はするが現在の経営状態では基本給の1か月分ですら支給することは無理である。」旨回答した。

令和6年11月14日正午頃、X組合はY社に対して、同月15日午前0時から24時間ストライキを行う旨を通告した(以下「本件ストライキ」という。)。なお、X組合とY社との間には、ストライキを行う場合には開始時刻の24時間前に通告する旨の協定があった。

令和6年11月15日、X組合は通告どおり本件ストライキに入るとともに、午前4時から午前9時までY社の工場正面出入口付近に小型乗用車1台を配置してピケッティングを張り、早朝のシフトに出勤する非組合員らに対して本件ストライキに協力するよう説得を試みた。もっとも、X組合は説得に応じなかった非組合員が工場内に入ることを妨げなかった。工場には正面以外にも、側面に出入口があり、当日、X組合の説得行為を厄介に感じた運搬業者などは、側面の出入口を利用した。同日午前9時過ぎ、X組合はピケッティングを解き、工場付近の公道を1キロメートルほどデモ行進し、地域の労働福祉会館で集会を行った後に解散した。

Y社は本件ストライキ当日、出勤日に当たっていた者とY社の要請に応じて出勤してきた者を合わせた通常時の3分の2程度の人員で工場を操業したが、人手が全く足りず、かつ作業に不慣れな者もいたため、業務は長時間に及んだ。

Aは総菜ラインの現場監督者であり、非組合員である。Aは週明けの月曜日に当たる令和6年11月18日の昼休憩時、担当ラインのシフトに入っていた従業員全員(40名程度)を集め、本件ストライキについて自らの意見を述べた。その内容は大要次のようなものであった。

X組合は、冬季一時金について具体的に交渉に入る前に、突然にストを行った。世間では七五三詣の行事の時期であり、菓子や総菜を作る我が社のかき入れ時であったことは分かっていたはずである。また、X組合は、24時間前通告というスト実施に関する協定を破ったため、工場では生ものである原材料を大量に廃棄せざるを得ず、多大な損害が出た。さらに、X組合は、スト当日早朝、工場正面出入口に車両を停止させ、入構者や取引業者の通行を妨げて営業を妨害した。冬季一時金についての会社の提案は現実的なものだ。それにもかかわらず、X組合がなぜこのような暴挙に出たのか、私には理解できない。

ストを指揮したX組合の幹部らはしかるべき処分を受けるべきだが、私は、会社から現場を預かる者として、そもそもこのように卑怯なX組合に加入している者がいること自体、信じられない思いだ。X組合に加入している者もそうでない者も、このことを是非しっかり考えてもらいたい。

令和6年11月25日、Y社とX組合は冬季一時金について第2回団体交渉を開催した。Y社は、前回の提示額に0.06か月分上積みし、基本給の0.56か月分を提示した。X組合は、同組合の組合員を含め、Y社内にX組合のやり方を批判する声が高まっていることから早期に事態を収拾すべきと考えて、Y社提示の支給額での協約の締結に応じた。

Y社総務部長Bは、令和6年12月15日の始業時の点呼の際に、シフトに入っている全従業員の面前で、現金の入った封筒を、本件ストライキ当日に勤務した従業員のうち所定の勤務時間を超え深夜まで勤務した75名に対し、「社長からの感謝の気持ちです。」と言いつつ、各々に手渡した。封筒の表には「弁当代」と書かれており、その金額は一律2000円であった(以下「本件弁当代」という。)。なお、上記75名に対する時間外及び深夜労働に対する割増賃金は就業規則所定のとおり支払われており、また、これまで割増賃金以外に時間外勤務及び深夜勤務に対して特別な金員が支払われた例はない。

Y社は、令和6年12月20日付けで、本件ストライキを指揮したX組合の委員長Cを、Y社の就業規則で定める懲戒事由(「会社の風紀秩序を乱したとき」)に該当するとして、所定の手続を経て、同規則所定の最も軽い処分である戒告処分に処した。

〔設 問〕

X組合は、①Cに対する戒告処分、②Aによる意見表明、③本件弁当代の支給について労働委員会に救済申立てをすることを検討している。X組合は、いかなる主張に基づきどのような救済を求めるべきか。また、労働委員会は、どのような命令を発することになると考えられるか。検討すべき法律上の論点を挙げながら、あなたの意見を述べなさい。なお、X組合は、労働組合法第5条第1項が定める救済申立ての要件を満たしているものとする。

出典:法務省「2025年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。