2024年 予備試験 論文式 租税法 第1問
問題
配点 50点[租 税 法]
令和3年1月1日、製薬会社A社(以下「A社」という。)は、著名な生化学者であるBを、A社が社内に新たに立ち上げた新薬開発研究所(以下「C研究所」という。)の所長に据えた。A社は、同族会社ではなく、暦年を事業年度とする。
A社とBの間で委任契約として締結された合意(以下「本契約」という。)には、以下の条件が含まれていた。
① Bは、C研究所の所長として、C研究所の運営について広範な裁量を与えられる。A社の職制上、C研究所の所長は執行役員(会社法上の執行役ではない。)として位置付けられ、A社経営陣の経営戦略上の指示に従って、C研究所スタッフの研究活動を指揮する。
② 契約期間は令和3年1月1日から令和5年12月31日までの3年間(以下「本契約期間」という。)とするが、A社とBの合意により更に2年間の延長が可能である。本契約期間におけるBの年俸は1億2000万円であり、A社はBに対して毎月末に1000万円を支払うものとする。本契約期間の満了前に、Bの申出により、随時、本契約を解約することができるが、解約日を含む月の翌月以降、上記の1000万円は支払われない。
③ 本契約期間中、BはA社の許可なくして講演・執筆及び副業をしてはならず、本契約期間中のBの研究活動の成果物に係る権利は全てA社に帰属する。
④ A社は、本契約が解約されることなく本契約期間の満了までBが勤務を継続した場合、Bに対して報奨金として2億円(以下「本報奨金」という。)を、本契約期間の末日から1月以内に支払う。なお、本契約が延長された場合にも、本報奨金は上記期限内に支払われる。
Bは、令和3年1月1日、本契約に基づいてC研究所の所長としての勤務を開始し、本契約期間の末日である令和5年12月31日をもって勤務を終了した。A社は、Bの仕事ぶりを高く評価していたため契約延長を申し入れたが、Bは、「しばらく仕事を離れて充電期間を持ちたい」という意向でこれを固辞した。A社は、契約条件④に基づき、令和6年1月25日、本報奨金をBに支払った。
以上の事案について、以下の設問に答えなさい。解答に当たっては、理由を付し、根拠条文がある場合はそれを明記しなさい。ただし、租税特別措置法の適用は考慮しないものとし、事案中の年月日にかかわらず、令和6年1月1日現在において施行されている法令に基づいて解答しなさい。
〔設問〕
⑴ A社は、令和3年から令和5年の各事業年度において、Bに対し、本契約に従って、毎月末に1000万円(1事業年度につき1億2000万円)を支払った。このA社のBに対する年俸の支払は、A社の各事業年度における所得の金額の計算上どのように扱われるかについて、Bの「役員」該当性に言及しつつ、説明しなさい。さらに、この年俸の支払に伴って、A社が負うことになる所得税法上の義務について、年俸の性質について検討を加えた上で、説明しなさい。
⑵ Bが受け取った本報奨金につき、所得税法上、Bの退職所得として扱われるとする見解と、それ以外の所得として扱われるとする見解が考えられる。そこで、①退職所得に該当するための要件を挙げ、②退職所得以外の所得に該当するとすればどの所得分類となるかについて、可能性のあるものを挙げた上で、③自説を論じなさい。
⑶ 設問⑵において、仮に本報奨金が退職所得に該当すると判断された場合に、①本報奨金の収入は、Bのいつの年分の所得税の課税標準にどのように反映されるかについて説明しなさい。解答に当たっては、本契約期間は短期勤続年数(所得税法第30条第4項)に一致するものとし、退職所得の金額の具体的な計算は不要とする。また、②本報奨金の支払は、A社のいつの事業年度の所得の金額にどのように反映されるかについて説明しなさい。
(参照条文)法人税法施行令
(役員の範囲)
第7条
法第2条第15号(役員の意義)に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
1 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。次号において同じ。)以外の者でその法人の経営に従事しているもの
2 (略)
出典:法務省「2024年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。