2024年 予備試験 論文式 国際関係法(公法系) 第1問
問題
配点 50点[国際関係法(公法系)]
A国とB国は、海を挟んで向かい合っている。A国とB国との間の海には、無人島であるP島があり、同島はA国の領土であることが古くから国際的に広く認められていた。
A国政府は、長年にわたる経済政策の失敗の結果、極端な財政難に陥り、国家財政の再建のためにP島をB国の利用に供して対価を得る方策を検討することになった。A国政府とB国政府は、P島に関する条約を締結するための外交交渉を開始した。その結果、A国とB国は、「P島の租借に関するA国とB国の間の条約」(以下「租借条約」という。)に署名し、同条約はその後A国及びB国の議会の承認を得て発効した。租借条約は、「B国は、P島をA国から本条約発効後50年間にわたり租借し、その間B国はP島を自由に利用することができる。」(第1条)、「B国は、P島を利用する対価として、A国に対して毎年1億米ドルの支払を行う。」(第2条)と規定していた。なお、A国とB国は、共に国際連合加盟国であり、条約法に関するウィーン条約及び海洋法に関する国際連合条約の当事国である。以上の事実関係を前提として、以下の各設問に答えなさい。なお、各設問はそれぞれ独立したものであり、相互に関係はないものとする。
〔設問1〕
租借条約の規定に従って、B国がA国に対して最初の1億米ドルの支払を行うとともにP島の利用を開始してから1か月後に、突如として巨大地震が発生してP島全体が低潮時においても水中に没することとなった。この場合、B国はA国に対してどのような主張を行うことができるか。国際法上の根拠を挙げながら論じなさい。
〔設問2〕
租借条約の締結に関するAB両国政府間の外交交渉の過程で、A国政府はB国政府に対して、P島には未開発の貴重な鉱物資源が埋蔵されている旨を公式に通告し、B国は、この情報に基づいて租借条約を締結した。租借条約の発効後、B国はA国に対して毎年1億米ドルの支払を行い、別途P島において多額の費用を掛けて鉱物資源の探査を行ったが、貴重な鉱物資源は全く発見されなかった。租借条約発効から3年が経過した時点で、A国政府がB国政府に通告したような鉱物資源はP島には埋蔵されていなかったことが明らかとなった。この場合、B国はA国に対してどのような主張を行うことができるか。国際法上の根拠を挙げながら論じなさい。
〔設問3〕
租借条約発効の5年後、A国政府の財政状況が更に悪化したため、A国はB国と再度外交交渉を行って租借条約を両国の合意に基づき終了させた上で、新たに「P島の主権移譲に関するA国とB国の間の条約」(以下「主権移譲条約」という。)を締結し、同条約はその後A国及びB国の議会の承認を得て発効した。主権移譲条約は、P島に関する主権をA国からB国に完全に移譲する対価として、B国がA国に100億米ドルを支払うことを規定していた。B国がA国に100億米ドルの支払を行いP島に関する主権がA国からB国に完全に移譲された後、B国はP島を起点とする200海里の排他的経済水域及び大陸棚を設定する国内法を制定した。これに対して、B国と国境を接し海に面しているC国は、「P島は無人島であるため、P島を起点としてB国の排他的経済水域及び大陸棚を設定することは国際法に違反しており認められない。」と主張して、B国に抗議した。C国のこのような主張に対して、B国はどのように反論できるか。国際法上の根拠を挙げながら論じなさい。なお、C国も国際連合加盟国であり、条約法に関するウィーン条約及び海洋法に関する国際連合条約の当事国である。
出典:法務省「2024年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。