司法試験論文式過去問演習

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2024年 予備試験 論文式 経済法 第1問

問題

配点 50点

[経 済 法]

【前提】

X社は、体勢を保持するための福祉用具である甲製品(以下「甲製品」という。)のメーカーであり、我が国の甲製品の販売分野において約35パーセントのシェア(甲製品の国内における総販売額に占める各社の販売額の割合)を有し、国内シェア第1位である。X社製甲製品は消費者から高い評価を得ており、甲製品を販売する小売業者(以下「販売業者」という。)にとってX社製甲製品を取り扱うことは営業上不可欠になっている。

メーカーは、販売業者を通じて甲製品を消費者に販売している。販売業者は、X社製甲製品だけでなく他メーカー製甲製品も販売しており、販売方法に特段の法規制はない。販売業者の販売形態には、店舗での販売とインターネットを利用した販売がある(以下、店舗での販売を行う販売業者を「店舗販売業者」、インターネットを利用した販売を行う販売業者を「ネット販売業者」という。)。その割合は、店舗での販売が約8割、インターネットを利用した販売が約2割となっており、インターネットを利用した販売の割合は漸増しつつある。X社製甲製品の小売価格は、それぞれの販売業者が独自に決定しているが、ネット販売業者の小売価格の平均は店舗販売業者の小売価格の平均より約10パーセント低い。

店舗販売業者の中には、その販売員がX社製甲製品の機能の特徴を説明して販売するもの(以下、このような販売方法を「説明販売」という。)も少数存在するが、ネット販売業者の中には説明販売を行っているものは存在しない。近年、X社製甲製品の販売額は伸び悩んでいる。その理由を、X社は、店舗販売業者の販売員が適切な説明をできておらず、X社製甲製品の機能の特徴を消費者に十分訴求できていない点にあると見ている。

〔設 問〕

⑴ 上記の【前提】に加え、以下の事実がある場合に、X社の令和6年6月1日以降の行為について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)上の問題点を分析して検討しなさい。

令和6年6月1日以降、X社は、店舗販売業者に対してのみ、X社が指示する方法・内容に基づく販売員教育を実施して、来店した消費者にX社製甲製品の適切な説明を行う場合に限り、説明販売を支援する協力金の提供を行うこととした。ネット販売業者は説明販売を行っていないことから協力金の提供を受けていない。この協力金の金額は、店舗販売業者に対するX社製甲製品の卸売価格の約5パーセントであり、店舗販売業者が説明販売に要する費用とおおむね同等である。

なお、X社は、販売業者に対するX社製甲製品の卸売価格について、店舗販売業者とネット販売業者との間で差を設けていない。

⑵ 上記の【前提】に加え、以下の事実がある場合(上記⑴記載の事実はない。)に、X社の令和6年9月1日以降の行為について、独占禁止法上の問題点を分析して検討しなさい。

令和6年6月1日、X社は、店舗販売業者に対し、X社が指示する方法・内容に基づく販売員教育を実施して、来店した消費者にX社製甲製品の適切な説明を行うように要請した。その後、この要請に従う費用(その金額は、店舗販売業者に対するX社製甲製品の卸売価格の約5パーセントである。)を甲製品の小売価格に上乗せして販売した結果、X社製甲製品の売上が大幅に減少したため、大半の店舗販売業者からX社に対し、このままでは説明販売を維持できないとの苦情が強く寄せられた。これに対応したX社による調査の結果、売上の大幅な減少の主な原因はネット販売業者への顧客流出であることが明らかとなった。

そこで、X社は、店舗販売業者に説明販売を継続してもらうため、ネット販売業者への顧客流出を阻止する必要があると考えて、同年9月1日以降、①店舗販売されるX社製甲製品の同年6月1日以降の小売価格の平均を「小売定価」と定めて、全ての販売業者に対して、X社製甲製品を「小売定価」で販売するよう求めることとし、②販売業者が「小売定価」どおりに販売しない場合、当該販売業者に対するX社製甲製品の出荷を停止することとし、その旨を全ての販売業者に通知した。その結果、全ての販売業者は、出荷停止を恐れて、X社製甲製品を「小売定価」で販売するようになった。

なお、X社は、販売業者に対するX社製甲製品の卸売価格について、店舗販売業者とネット販売業者との間で差を設けていない。

出典:法務省「2024年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。