2024年 予備試験 論文式 環境法 第1問
問題
配点 50点[環 境 法]
次の設例を読んで、以下の小問に答えなさい。なお、小問はいずれも独立したものである。
【設例】
A県内のB国立公園にある特別保護地区内には、国有林(ブナ林)があり、甲遊歩道が設置されている。Xが甲遊歩道を散策していたところ、甲遊歩道の入口から約500メートルの地点(以下、この地点を「本件現場」という。)において、突然付近の国有林にあったブナの木が甲遊歩道上のXに向かって倒れてきたため(以下、倒木したブナの木を「本件ブナの木」という。)、Xはこれを避けようとしてその場で転倒し、足を骨折する等全治3か月の怪我をした(以下「本件事故」という。)。
本件現場の周辺地域は、国道に隣接して乙休憩所が設置され、同休憩所からブナ林内を2キロメートルほど進んだ特別保護地区内に、景観が良好なことで全国的にも知られている丙渓谷があった。甲遊歩道は、乙休憩所から丙渓谷までをつなぐ通路として設置されたものであって、甲遊歩道には、約100メートルおきに休息のためのベンチが置かれていた。また、本件ブナの木の近くにもベンチが置かれており、観光客が本件ブナの木周辺において散策ないし休息することが予定されていた。本件事故当時、甲遊歩道を通って丙渓谷を訪れる観光客は、年間約50万人程度であった。甲遊歩道は、国有地を借り受けたA県が設置したものであり、A県が維持管理を行っていた。本件ブナの木は国有地上の天然木であり、本件事故前に、国とA県が毎年定期的に合同で実施している安全点検の際に、倒木のおそれがあるとは判定されていなかったが、本件事故後の調査により木の内部の腐食が進んでいたことが倒木の原因であると判明した。
【小問】
⑴ B国立公園内には「特別地域」のほかに「普通地域」がある。自然公園法上、普通地域内において、広告物を設置する行為につき、事前にどのような手続をとる必要があるか。特別地域における上記行為に対する事前の手続的義務と対比しながら、根拠条文を挙げつつ、その手続の内容を説明しなさい。併せて、その手続的義務に違反して当該行為に着手した者に対して、刑事的な制裁を科すために環境大臣が採れる措置について説明しなさい。
⑵ 丙渓谷を訪れる観光客が年々増加傾向にあり、それに伴って良好な景観の維持が困難となり、管理にも支障が生じてきている。この場合に環境大臣が採り得る自然公園法上の措置を説明しなさい(ただし、当該措置を採るための手続については論じる必要はない。)。
⑶ Xは、国及びA県に対し、損害賠償請求を検討している。どのような法的構成が考えられるか、根拠条文や要件を挙げつつ説明しなさい(ただし、甲遊歩道の設置管理に係る費用を負担している観点からの責任については問わない。)。
⑷ 現時点において、環境大臣は、A県内に新たに国立公園を指定し、かつ、その区域内に特別地域を指定しようとしている。当該特別地域予定区域内に民有地が存在する場合、その指定に当たって、所有者の同意が必要となるか。なお、国立公園の指定の前段階となる候補地の選定に際しては、法規の性質を有しない要領が参考にされている。【資料1】は以前に用いられていたものであり、【資料2】は現在用いられているものである。これらを踏まえつつ、土地所有者の同意の要否について、そのように考える理由とともに説明しなさい。
【資料1】
自然公園選定要領(昭和27年9月)(抜粋)
自然公園は傑出した自然の風景地中、下の要件を具備するものにつき選定するものとする。
(略)
第2要件 土地
(略)
社寺有地、私有地を包含する場合にあっては、土地の所有その他の関係者が特別地域の設定に協力的であること。
(以下略)
【資料2】
国立公園及び国定公園の候補地の選定及び指定要領(平成25年5月)(抜粋)
1 国立公園及び国定公園の候補地の選定
国立公園及び国定公園の候補地は、全国的な観点から検討を行い、以下の要件を満たす地域を選定する。
(略)
⑸ 第5要件 地域社会との共存
候補地について、国立公園又は国定公園として保護及び利用することについて地域社会の理解が得られること。
(以下略)
出典:法務省「2024年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。