2024年 司法試験 論文式 民事系科目 第1問
問題
配点 100点[民事系科目]
〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕及び〔設問2〕の配点は、50:50〕)
次の各文章を読んで、後記の〔設問1⑴・⑵〕及び〔設問2〕に答えなさい。
なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、令和6年1月1日現在において施行されている法令に基づいて答えなさい。
【事実】
1.Aは、遠方に、空き地である甲土地を所有しており、甲土地の所有権の登記名義人はAである。
2.令和2年4月1日、Aの子Bは、Aの了承を得ないまま、甲土地について、Cとの間で、賃料月額5万円、賃貸期間30年間、建物所有目的との約定による賃貸借契約(以下「契約①」という。)をBの名において締結し、同日、甲土地をCに引き渡した。契約①の締結に当たり、Cが、Bに対し、甲土地の所有権の登記名義人がAである理由を尋ねたところ、Bは、「Aは父であり、甲土地は既にAから贈与してもらったものだから、心配はいらない。」と言い繕った。Cがなお不安がったことから、契約①には、甲土地の使用及び収益が不可能になった場合について、損害賠償額を300万円と予定する旨の特約が付された。
3.令和2年7月1日、Cは、甲土地上に居住用建物(以下「乙建物」という。)を築造し、乙建物について所有権保存登記を備えた。Cは、乙建物に居住している。
4.令和3年7月10日、Bが急死した。Bは、遺言をしておらず、また、Bの相続人は、Aのみである。Cは、Bの相続人が誰であるか分からなかったことから、Bの死亡後、甲土地の賃料を供託している。
5.令和4年4月15日、Aは、甲土地をCが利用していることに気付き、Cに対し、甲土地の所有権に基づき、乙建物を収去して甲土地を明け渡すよう請求した(以下「請求1」という。)。これに対して、Cは、「㋐私は、契約①に基づいて甲土地を占有する権利を有している。仮にそのような権利がないとしても、㋑300万円の損害賠償を受けるまでは甲土地を占有する権利がある。」と反論した。
〔設問1⑴〕
【事実】1から5までを前提として、次のア及びイの問いに答えなさい。
ア Cは、下線部㋐の反論に基づいて請求1を拒むことができるかどうかを論じなさい。
イ 下線部㋐の反論が認められない場合に、Cが下線部㋑の反論に基づいて請求1を拒むことができるかどうかを論じなさい。
【事実】
6.【事実】5の後、AとCとの間で交渉が持たれ、令和4年6月1日、Cは、乙建物を代金280万円でAに売却し、同日、乙建物をAに引き渡した。その後、乙建物について、CからAへの所有権移転登記がされた。
7.令和4年6月15日、Aは、乙建物について、Dとの間で、賃料月額12万円、賃料前月末日払、賃貸期間2年間との約定による賃貸借契約(以下「契約②」という。)を締結し、同年7月1日、乙建物をDに引き渡した。
Dは、令和4年7月分から9月分までの賃料を、それぞれ約定どおりAに支払った。
8.令和4年9月初めから雨が降り続く中、同月11日、乙建物の一室(以下「丙室」という。)で雨漏りが発生し、同日以後、丙室は使用することができなくなった。その後の調査によれば、丙室の雨漏りは、契約②が締結される前から存在した原因によるものであった。
9.令和4年9月13日、Dは、Aに何らの通知もしないまま、建設業者Eに丙室の雨漏りの修繕工事を依頼した。Eは、雨漏りの状態を確認した上で、同月20日、この依頼を報酬30万円で引き受け、同月24日から30日まで丙室の雨漏りの修繕工事(以下「本件工事」という。)を行った。Dは、Eに30万円の報酬を支払い、同年10月1日から丙室の使用を再開した。
令和4年9月30日、Dは、翌日から丙室の使用が可能となったため、Aに令和4年10月分の賃料を支払った。
10.令和4年10月10日、Dは、Aに対して、同年8月31日に支払った令和4年9月分の賃料の一部を返還するよう請求する(以下「請求2」という。)とともに、DがEに報酬として支払った30万円を直ちに償還するよう請求した(以下「請求3」という。)。Aは、この時に初めて、丙室に雨漏りが発生した事実とDがEに本件工事を行わせた事実とを知った。
Aは、請求2及び請求3を拒み、Dに対し、「特に修繕工事を急ぐべき事情はなかったのだから、Dは、そもそも、丙室の雨漏りを無断で修繕する権利を有していなかったはずだ。しかも、DがEに支払った報酬30万円は高すぎる。私が一般の建設業者に依頼していれば20万円で足りたはずだ。」と反論した。
〔設問1⑵〕
【事実】1から10までを前提として、次のア及びイの問いに答えなさい。
ア 請求2が認められるかどうかを論じなさい。
イ 請求3が認められるかどうかを論じなさい。なお、本件工事の実施について急迫の事情はなく、また、本件工事と同じ内容及び工期の工事に対する適正な報酬額は20万円であるものとする。
【事実】
11. 令和5年9月15日、Fは、Gに無断で、Gが所有する丁土地を駐車場として使用し始めた。Gは、Fとは知らない仲ではなかったことや、G自身は丁土地を使用する予定がなかったことから、Fに対し、口頭で抗議をする以外のことをしなかった。
12. 令和5年12月5日、Gは、配偶者であるHと協議により離婚し、Hとの間で離婚に伴う財産分与について協議をした。Gは、丁土地以外の財産をほとんど持っておらず、また、失職中で収入がなかった。Gは、Hに対し、Gの財産及び収入の状況を伝えるとともに、丁土地はFが無断で使用しているだけなので、いつでもFから返してもらえるはずであると説明した。
13. 令和5年12月6日、GとHとの間で、離婚に伴う財産分与として、Gが丁土地をHに譲渡する契約(以下「契約③」という。)が締結された。その際、Gは、GではなくHに課税されることを心配して、そのことを気遣う発言をしたのに対し、Hは、「私に課税される税金は、何とかするから大丈夫。」と応じた。Hは、Hにのみ課税されるものと理解していた。同月11日、丁土地について、GからHへの所有権移転登記がされた。
14. 令和6年1月10日、HとIとの間で、Hが丁土地を代金2000万円でIに売る契約(以下「契約④」という。)が締結された。Hは、Iに対し、丁土地の使用に係る事情について、HがGから受けた説明のとおりに説明した。同日、Iは、Hに対し、契約④の代金を支払った。丁土地について、HからIへの所有権移転登記は、されなかった。
15. 令和6年1月15日、Gは、税理士である友人から、課税されるのは財産分与をした側であるGであり、その額はおおよそ300万円であるとの指摘を受けた。Gは、契約③に係る課税についての誤解に基づきHとの間で契約③を締結したことに気付いたため、同日、Hに対し、契約③をなかったこととする旨を伝えた。Iは、Gが契約③に係る課税について誤解していたことを契約④の締結時に知らず、そのことについて過失がなかった。
16. 令和6年1月18日、Gは、丁土地を駐車場として使用しているFに対し、丁土地を買わないかと持ち掛けた。Gは、丁土地の所有権の登記名義人がHとなっていることについては、GとHとの間で契約③が締結されたものの、Gが契約③に係る課税について誤解していたため、契約③は既になかったこととなっているとFに説明した。同月25日、GとFとの間で、Gが丁土地を代金2000万円でFに売る契約(以下「契約⑤」という。)が締結された。同日、Fは、Gに対し、契約⑤の代金を支払った。
〔設問2〕
【事実】11から16までを前提として、次の問いに答えなさい。
令和6年1月30日、Iは、丁土地を占有するFに対し、丁土地を明け渡すよう請求した(以下「請求4」という。)。請求4が認められるかどうかを論じなさい。
出典:法務省「2024年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。