2023年 予備試験 論文式 倒産法 第1問
問題
配点 50点[倒 産 法]
次の文章を読んで、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
【事例】
A社は、高級婦人服を中心とし、学生服の販売も手掛けている総合衣料品店を経営している、資本金1000万円の株式会社である。A社は、衣料品の販売不振や販売商品の多角化による事業拡大の失敗により、総額2億円の負債を抱えて債務超過に陥り、令和5年3月1日、再生手続開始の申立てをした。裁判所は、同日、監督命令を発令し、同月8日、A社について再生手続開始の決定をした。なお、監督命令と同時に発令された弁済禁止の保全処分において、10万円以下の債務は弁済禁止の対象外とされた。
A社の株主は2名で、株主構成としては、B(A社の代表取締役)が60株を、Bの父であるCが40株を保有している。
A社の再生手続開始の決定時の債権者は、金融機関が計3社、衣料品の製造委託先10社や販売商品の仕入先20社を含む商取引先が計50社、A社の店舗で使用することができるクーポン券の保有者が300名である。
〔設問1〕
以下の小問⑴から⑶までに答えなさい(各小問は独立した問題である。)。
⑴ 販売商品の仕入先20社は、A社にとって、いずれも他の仕入先を見付けることも可能な取引先であり、取引継続の必要性の高い取引先ではない。仕入先20社は、再生手続開始の決定後である令和5年3月13日から同月15日までの間にかけて、同年2月末日までに納品した商品についての未払売買代金を約定どおりに支払ってほしいとA社に伝えてきている。
A社は、仕入先20社に対し、未払売買代金を約定どおりに支払うことができるか、説明しなさい。
⑵ クーポン券は、令和5年2月末日までに、A社の店舗で学生服を購入した者に対し、購入金額に応じて配布されたもので、額面が1000円であり、A社の店舗において、購入した学生服の仕立て直しや校章入りワイシャツの購入などをする際に、金券として使用することができる。クーポン券を最も多く保有する者は、1人で10枚(額面合計1万円)を保有している。クーポン券の保有者300名が有するクーポン券の額面総額は、合計100万円である。A社は、再生手続開始の決定後の同年3月13日、A社を学生服の指定販売店とする複数の学校から、保護者から学校に問合せが相次いでいるので、直ちに対応してもらいたいとの連絡を受けた。学校からの連絡によれば、保護者は、学生服の仕立て直しや校章入りワイシャツの購入などをする際のクーポン券の使用に支障が出るのかについて不安があるようであり、クーポン券を使用することができない場合には、店舗での混乱も予想される状況であった。
A社として、再生手続開始の決定後、店舗での混乱を回避し、再生手続を円滑に進めるために、保護者の要望に応じてクーポン券を使用させることができるか、クーポン券の保有者の権利が再生手続においてどのように取り扱われるかを述べた上で論じなさい。
⑶ 製造委託先10社のうち高級服の製造を委託しているD社、E社及びF社(以下「D社ら」という。)は、その縫製技術の高さから、早期に代替先を確保することが難しい委託先であり、A社販売の高級服を愛用する顧客層を維持するためにも不可欠な取引先である。再生手続開始の決定後の令和5年3月9日にA社がD社らに連絡を取ったところ、D社らは、A社に対し、いずれもA社との取引継続に理解を示したが、同年2月末日までに納品した高級服についての未払委託料が約定期限である同年3月31日までに支払われなければ、新たな取引はしないと伝えた。D社、E社及びF社に対する未払委託料は、それぞれ60万円、70万円、80万円である。A社としては、事業価値の劣化を回避するためにも、D社らについて、その要望に応じて、未払委託料を約定期限までに支払って今後も取引を続けたいと考えている。
A社として、D社らに対する未払委託料を約定期限までに支払うことができるか、論じなさい。
〔設問2〕
Bは、A社の事業に関心を示してきた高級紳士服店を経営するG社に事業の全部の譲渡を行い、その譲渡代金により、債権者に一括して弁済したいと考えている。そこで、Bは、再生計画により事業譲渡を行うことも検討したが、その間の事業価値の劣化により、譲渡代金の低下やそれに伴う弁済率の低下も予想されたことから、早期に再生計画によらずにG社への事業譲渡を行いたいと考えている。これに対し、A社の創業者であるCは、事業規模縮小による自主再建を目指したいと考えており、事業譲渡を行うというBの方針に反対の意向を示している。Bが想定するG社への事業譲渡の対価は、公認会計士作成の資料によれば適正な価格である。
A社として、再生計画によらずに事業譲渡を迅速に行うために、民事再生法上、どのような方策を採ることができるか、その場合の裁判所における手続についても触れつつ論じなさい。
出典:法務省「2023年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。