2023年 司法試験 論文式 租税法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
令和3年10月1日、Aは、自らの財産をE株式会社(以下「E社」という。)に全部包括遺贈し、その遺言執行者をCとする旨の遺言を残して死亡した。死亡時のAの財産は、甲土地、乙土地及び丙家屋のほかは、若干の銀行預金があるのみであった。
甲土地及び乙土地は、いずれもAが平成元年頃に各2000万円で購入した土地である。Aは、甲土地上に自己居住目的で丙家屋を建設し、乙土地を駐車場として、利用してきた。Aの死亡時の甲土地及び乙土地の時価は、いずれも3000万円であった。なお、Aは、配偶者と死別しており、相続人は子Bのみであったが、10年以上音信不通の関係であった。
E社は、平成10年4月1日にAがCと2人で創業し、Aの死亡時は、Cの子Dが代表取締役を務めていた。E社は、毎年4月1日から翌年3月31日までの期間を事業年度としている。創業以来、Aは、E社の発行済株式の2分の1を保有して経営に携わってきたが、平成20年頃にBが起こした詐欺事件の示談金に充てるために、保有するE社株式の全てをCに売却し、その後しばらくしてE社の経営からも退いた、という経緯がある。AとBが疎遠になったのも、この事件がきっかけであった。
Aの死亡後、Cは、遺言に従って、甲土地、乙土地及び丙家屋をE社に管理させるとともに、E社への所有権移転登記を了した。その後、Dが自宅の建て替え工事のために臨時の住居を必要としていたため、E社は、丙家屋をDに利用させることとした。そして、Dは、丙家屋を無償で利用する地位をDの報酬の一部とする旨のE社の株主総会決議(会社法第361条第1項第6号)を経て、令和4年3月1日から丙家屋の居住を開始した。
令和4年3月15日、E社は、Bから、Bの遺留分を侵害しているので遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求する旨の通知を受領した。E社は、Bとの交渉を経て、同年6月10日に、以下の内容のとおり合意し、同月25日、乙土地をBに引き渡すとともに、所有権移転登記を了した。
① E社は、Bに対し、Bの遺留分侵害額請求権に基づく金3000万円の支払義務があることを認める。
② E社は、Bに対し、本合意の成立以後1か月以内に、金3000万円の支払に代えて乙土地を譲り渡す。
③ E社とBは、互いにその余の請求権を有しないことを確認する。
令和5年3月31日、Dは、新居に引っ越すために丙家屋から退去し、E社に明け渡した。なお、Dの居住期間を通じて、近隣地で丙家屋と同等の住居を賃借した場合の賃料相場は月額10万円であった。
以上の事案について、以下の設問に答えなさい。ただし、租税特別措置法の適用は考えなくてよい。また、問題文から読み取れるものを除いて、取得費及び譲渡費用はないものとして解答せよ。
〔設 問〕
1 包括遺贈により甲土地及び乙土地が移転されたことについて(その他の財産は無視してよい。)
⑴ E社の法人税の課税関係がどうなるか、説明しなさい。
⑵ E社が取得した甲土地及び乙土地の取得価額は幾らとなるか、根拠条文とともに説明しなさい。
⑶ この包括遺贈に伴うAの所得税の課税関係がどうなるか、説明しなさい。
2 E社がBからの遺留分侵害額の請求を受けて乙土地を譲渡したことについて、E社の法人税の課税関係がどうなるか、年度帰属を明らかにしつつ、説明しなさい。
3 令和5年3月期(令和4年4月1日から令和5年3月31日までの事業年度をいう。)におけるDの丙家屋の無償利用について
⑴ E社の法人税の課税関係がどうなるか、説明しなさい。
⑵ E社が所得税法上負うことになる義務について、簡潔に説明しなさい。
(参照条文)法人税法施行令
(定期同額給与の範囲等)
第69条 法第34条第1項第1号(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める給与は、次に掲げる給与とする。
一 (略)
二 継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの
2 (以下略)
出典:法務省「2023年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。