2022年 予備試験 論文式 倒産法 第1問
問題
配点 50点[倒 産 法]
次の文章を読んで、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
【事例】
A株式会社(以下「A社」という。)は、自動車部品の製造及び販売を業とする株式会社である。A社は、順調な業績を維持していたが、令和2年度に初めて赤字決算となったことから、自己所有の甲土地をB株式会社(以下「B社」という。)に売却することとし、令和3年9月15日、B社との間で、売買代金を取引相当額である5000万円とする売買契約を締結した。A社は、同日、B社から売買代金の支払を受けるのと引換えに、B社に対し、甲土地を引き渡すとともに、所有権移転登記手続の申請に必要な書類を交付したが、その際、甲土地を買い戻す意思があり、近く買戻資金の手当ができる見込みなので、所有権移転の登記申請の実行を半年程度待ってほしいと要請した。B社はこの要請に応じたが、実際は、A社において買戻資金を調達する予定はなく、むしろ、他の取引先から信用供与を得る可能性を残すために、甲土地の所有名義をA社のままにしておくことが目的であった。
しかしながら、令和3年10月以降、A社の売上げの半分以上を占めていたC株式会社(以下「C社」という。)からの売掛金の支払が滞るようになり、同年12月5日にC社が破産手続開始の申立てをしてC社からの売掛金の支払が完全に途絶えたため、A社は、資金繰りに窮することとなった。そこで、A社は、メインバンクを含む金融機関に緊急の融資を求めたものの、十分な額の融資を受けることができなかったことから、令和4年1月25日を支払期限とするD株式会社に対する買掛金の支払を遅滞するに至ったほか、同月31日を支払期限とするメインバンクに対する借入金の分割弁済もできなかった。
その後、A社は、令和4年2月20日、代理人弁護士Eの名義で、取引先や取引金融機関に対し、A社は近日中にEを申立代理人として破産手続開始の申立てを行う予定であり、債務の支払についてもそれまでの間停止する旨の通知(以下「本件通知」という。)を発した。さらに、A社は、同年3月6日、F地方裁判所に対し、破産手続開始の申立てを行ったところ、F地方裁判所は、翌7日、破産手続開始決定を発し、併せて弁護士Gを破産管財人に選任した。
〔設問1〕(⑴と⑵は、独立した問題である。)
⑴ B社は、令和4年2月21日に本件通知を受け取ったため、登記手続に必要な印鑑証明書を改めてA社から取得して、同年3月1日、甲土地についてB社への所有権移転登記手続を行った。この登記手続を申請する行為につき、破産管財人GのB社に対する否認権の行使が認められるか、論じなさい。
⑵ B社は、令和4年2月3日、A社において取引先に対する買掛金の支払やメインバンクに対する借入金の返済が滞っているとの情報に接したことから、登記手続に必要な印鑑証明書を改めてA社から取得して、同月12日、甲土地についてB社への所有権移転登記手続を行った。この登記手続を申請する行為につき、破産管財人GのB社に対する否認権の行使が認められるか、反対の結論を採る立場にも言及しつつ、論じなさい。
〔設問2〕
仮に、〔設問1〕⑴において、甲土地の所有権移転登記手続を申請する行為が否認された場合、B社と破産管財人Gとの間の法律関係はどのようになるか、論じなさい。また、甲土地の売買契約に係る代金額が1000万円であり、廉価売却であるとして甲土地の売買契約自体が否認された場合のB社と破産管財人Gとの間の法律関係についても、説明しなさい。
出典:法務省「2022年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。