2022年 予備試験 論文式 労働法 第1問
問題
配点 50点[労 働 法]
次の事例を読んで、後記の設問に答えなさい。
【事例】
Y社は、全国の百貨店内のテナント店舗のほかに多数の路面店を展開して女性服の小売業を営む会社であり、Xは、平成29年4月1日からY社の路面店A店で販売担当従業員として勤務する有期労働契約社員である。
Xは、販売担当従業員として勤務を始めた当初の1年半は平均的な成績であったが、接客の才能を徐々に開花させ、その後は常に売上成績においてA店のトップであった。その一方で、Xの同僚との関係は良好なものではなく、業務の進め方や店内での従業員間のコミュニケーションの取り方に問題があった。例えば、A店においては、販売担当従業員が接客をしたことにより来店客が商品の購入を決めた場合には、当該販売担当従業員が当該商品の配送の手配や代金受領の手続等をすることとされていたにもかかわらず、Xは、これを同僚に押し付けることを繰り返していた。そのため、同僚らは、Xの接客技術については一目置いていたものの、その勤務態度に大いに不満を持っていた。また、Xは、同僚に対し商品の在庫確認を依頼する際に誤った説明をしておきながら、在庫不足が問題となった際には、上司に対し同僚のミスであるなどと報告して責任を転嫁したり、他の従業員への必要な声掛けや引継ぎをしないまま勝手に休憩に入ってしまったりすることを繰り返していた。
Y社の有期労働契約社員の契約期間は1年であり、Y社は、契約更新の際、有期労働契約社員に対し、新たに労働契約書に署名・押印をさせるだけでなく、その機会に、売上成績や勤務態度、能力評価などを考慮して更新後の年俸額を決定していた。Xについては、令和2年4月及び令和3年4月の契約更新の際、勤務態度を改善すべきことが指摘されたものの、売上成績がA店において群を抜いていたことから、契約不更新の可能性が指摘されることはなかった。その間、A店の店長Bは、同店の売上げを支えるXが前記のような勤務態度を改めることを期待してXに対して指導を行うこともあったが、同僚とのトラブルはなくならず、多くの場合、他の販売担当従業員に対して「多少は大目に見てやってくれ。」などと言って我慢をさせ、Xとの衝突が激しくなったときには、他の販売担当従業員を他店へ異動させることも数回あった。
令和3年4月の契約更新後も、Xの売上成績は依然として他の販売担当従業員を引き離してA店のトップであったが、Xの前記のような勤務態度が根本的に改まることはなく、また、他の販売担当従業員に我慢を強いてきた結果、A店全体の職場環境は、相当悪化した状態にあった。店長Bは、新人販売担当従業員2名が、そうした職場環境の悪さやXとの不仲を理由に立て続けに退職したことを契機として、これ以上Xを立て続けるのは困難であると感じ、契約の更新の繰り返しにより通算契約期間が5年を超える前にXの有期労働契約を更新しないこととすることを決断した。Y社は、契約期間満了日の3か月前よりも更に前の令和3年12月中に、Xに対して、契約を更新しない旨を通知した。
Xは、Y社が労働契約を更新しなかったことは不当であり、Y社との労働契約は令和4年4月1日以降も存続していると主張している。
〔設問〕
Xが訴訟で令和4年4月1日以降も労働契約が存続していることを主張する場合、裁判所に対してどのような請求をすることが考えられるか。また、その請求は認められるか。問題となる法令上の条文と考えられる論点を指摘しつつ検討し、あなたの見解を述べなさい。
出典:法務省「2022年司法試験予備試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。