2022年 司法試験 論文式 租税法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
Aは、B電力株式会社(以下「B社」という。)との間で委託検針契約を締結している検針員である。Aの業務内容についてはB社が責任を負い、AはB社から身分証明書の交付を受け、社名入り作業衣等が貸与され、定例日制のため検針日が定められている。また、Aは月1回程度、B社会議室での打合せに出席しなければならず、委託手数料もB社の一般従業員の給与に相応し、毎年夏冬の2回には特別謝礼金、契約終了時に解約謝礼金が支払われている。他方でAは、契約で定められた事項によってのみB社に従属しており、委託手数料は検針業務及び付随業務に応じた出来高制で、就業時間は定例検針日の日数と受持件数次第で異なり、主要な交通手段であるバイクの購入、維持費等はAの個人負担であり、検針作業を第三者に代行させることも禁止されていない。
C株式会社(以下「C社」という。)は、自動車部品の製造等を業とする株式会社であり、B社との間で電力供給契約を締結し、電力の供給を受けてきた。令和元年12月に、B社の事業拡張に伴い、B社とC社との間で電力供給契約の内容が一部変更されたが、その際に、Aによって電力計量装置の設定が誤って行われた。そのために、B社は、それ以後1年間にわたり、本来契約上支払うべき電気料金の2倍の金額をC社に対して請求した。C社は、令和2年1月から同年12月までの間、B社から請求された金額をそのまま支払い、その金額を、同年1月1日から同年12月31日までの事業年度に係る所得の金額の計算上、損金の額に算入して、同事業年度の法人税の申告納付を行った。なお、Aによる当該電力計量装置の設定変更は、本来の手順と異なる手順で行われたことから、その変更内容をB社で把握することができず、C社にとっても過大に徴収されていることを直ちに発見することは事実上不可能であった。
令和3年1月15日に、C社の従業員Dは、令和2年分の電気料金が、事業拡張を考慮しても例年と比較して高額であったことから、B社に対してその点の問い合わせを行った。それを契機として、同月30日に、Aは当該電力計量装置の設定の誤りを発見し、直ちにそのことをB社に報告した。B社は、社内に保存されていた資料を基に、過収電気料金の額を算出した。令和3年4月15日、B社の管轄営業所所長ほかが、C社に対し、当該電力計量装置の誤設定を原因とする過収電気料金相当額の精算金(令和2年1月から同年12月までのもの)が500万円となることを説明し、令和3年5月末日に返還したい旨申し入れ、C社の承諾を得た。精算金500万円は、令和3年5月31日にB社からC社の銀行口座に振り込む方法にて支払われた。
B社には、前記の過収電気料金の返戻に関する調査及びC社との交渉のために、50万円の費用がかかった。令和3年11月2日、B社とAとの話し合いの結果、50万円のうち40万円をAがB社に解決金として支払う旨合意し、同日、AはB社に40万円を支払った。
また、Dは、令和3年8月末、C社を退職し、同年9月1日、C社は、Dに対し、退職金規程に基づき退職一時金1000万円を支払った。
以上の事案について、以下の設問に答えなさい。なお、B社及びC社は、毎年1月1日から12月31日までの期間を事業年度としている。
〔設 問〕
1 AがB社から支給された委託手数料は、所得税法上、いずれの所得に分類されるか、説明しなさい。
2 AがB社に支払った解決金40万円が損害賠償額として相当であり、かつ、電力計量装置の設定の誤りについてAに重過失があるものとした場合、AがB社に支払った40万円について、Aの所得税の課税関係はどうなるか、説明しなさい。
3 C社がB社に過大に支払った電気料金と、B社から受け取った500万円の精算金について、C社の法人税の課税関係はどうなるか、説明しなさい。
4 B社がC社から過大に受け取った電気料金と、その精算金の支払について、B社の法人税の課税関係はどうなるか、説明しなさい。
5 令和3年分のDの退職所得について、退職所得という所得の種類が所得税法に設けられている趣旨・目的を明らかにした上で、その金額と所得税の徴収の手続について、簡潔に説明しなさい。ただし、税額の計算は不要とする。なお、Dの勤続期間は13年とする。
(参照条文)所得税法施行令
(必要経費に算入されない貨物割に係る延滞税等の範囲)
第98条
1 略
2 法第45条第1項第8号に規定する政令で定める損害賠償金(これに類するものを含む。)は、同項第1号に掲げる経費に該当する損害賠償金(これに類するものを含む。以下この項において同じ。)のほか、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務に関連して、故意又は重大な過失によって他人の権利を侵害したことにより支払う損害賠償金とする。
出典:法務省「2022年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。