2021年 司法試験 論文式 国際関係法(私法系) 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
A社は,システムの開発及び販売を業とする甲国の株式会社である。A社は,日本の株式会社J社と甲国の株式会社K社が10年前に共同で設立したものであり,甲国以外に資産や営業所を有していない。
Bは,J社の従業員であったが,A社の設立に際し,J社を退職してA社の取締役に就任した。Bは,A社の取締役に就任する際に日本から甲国に住所を移した。Bは,甲国以外に資産を有していない。
G庁は,乙国の政府機関である。乙国は,丙国を挟んで甲国と地続きの関係にある。G庁は,A社の大口取引先であり,A社におけるG庁の担当者はBである。Bは,頻繁にG庁を訪問しているが,その際には,A社が保有する自動車(以下「本件自動車」という。)を自ら運転し,甲国から丙国を通過して乙国に至る国際高速道路を利用するのが通常であった。
Xは,Bの大学時代の友人であり,出生以来,日本に住んでいる。Xは,かねてより乙国に関心があり,その観光についてBに相談したところ,Bは,その翌月にA社製の最新型システム管理用機械(以下「本件機械」という。)をG庁に納入することになっていたことから,本件機械をG庁に納入する際に本件自動車に同乗してはどうかとXに提案した。この提案を受け,Xは,甲国に渡航し,Bが運転する本件自動車に同乗し,B宅から乙国に向けて出発した。ところが,Bが運転する本件自動車は,国際高速道路を進行中,丙国の領域内に入った地点でカーブを曲がり切れずに道路側壁に衝突した(以下「本件事故」という。)。本件事故により,Bは軽傷で済んだものの,Xは重傷を負い,本件自動車に積載していた本件機械も完全に損壊してしまった。Xは,丙国内の救急病院で緊急手術を受けた後,医療環境の整った日本での治療を希望したため,日本に帰国して病院での入院治療を継続した。
Bは,Xに対し,丙国内での緊急手術の費用等については,その支払を任意で行ったが,日本の病院での入院治療費については,Xが自ら日本での入院治療を選択したことを理由に,その支払を拒んでいる。
以上の事実を前提として,以下の設問に答えなさい。なお,各問は独立した問いである。
〔設問1〕
Xは,本件事故の原因がBの過失によるものであると主張し,Bに対し,本件事故に基づく損害賠償として,日本の病院での入院や治療に要した費用の支払を求める訴え(以下,本設問において「本件訴え」という。)を日本の裁判所に提起した。
〔小問1〕
本件訴えについて,日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどうかについて論じなさい。ただし,応訴による国際裁判管轄権について論じる必要はない。
〔小問2〕
Bは,本件訴えに対して応訴し,日本の裁判所において,本件事故はBの過失によるものではないと主張して争っている。本件訴えにおいて,XのBに対する損害賠償請求が認められるか否かについて,日本の裁判所は,いずれの国の法を適用して判断すべきか論じなさい。なお,日本の裁判所の国際裁判管轄権について論じる必要はない。
〔設問2〕
本件自動車は,日本国内に本店を有する日本法人C社が日本国内の工場で製造したものであった。
A社は,本件事故の原因が本件自動車の欠陥にあったと主張し,C社に対し,本件事故に基づく損害賠償として,G庁への本件機械の売却代金に相当する金額の支払を求める訴えを日本の裁判所に提起した。
〔小問1〕及び〔小問2〕のそれぞれの場合において,A社のC社に対する損害賠償請求が認められるか否かについて,日本の裁判所は,いずれの国の法を適用して判断すべきか論じなさい。なお,日本の裁判所の国際裁判管轄権について論じる必要はない。
〔小問1〕
A社は,甲国の自動車販売会社D社から本件自動車を購入し,甲国内でその引渡しを受けていた。C社は,自社の自動車を甲国内で販売するための契約をD社との間で締結しており,本件自動車は,この契約に基づき,C社からD社に対して甲国内で引き渡されたものであった。
〔小問2〕
甲国は,甲国内で新車として販売される自動車が満たすべき排気ガス等の環境基準について,周辺国よりも厳しい基準を設定していたところ,C社は,甲国の環境基準を満たす自動車を製造しておらず,甲国市場には販路を有していなかった。
C社は,乙国の環境基準を満たす自動車を製造しており,自社の自動車を乙国内で販売するための契約を乙国の自動車販売会社E社との間で締結していたところ,本件自動車は,この契約に基づき,C社からE社に対して乙国内で引き渡され,これをE社が新車として乙国居住者Fに販売したものであった。Fは,その後,本件自動車と共に甲国に転居し,計3年ほど甲国内で本件自動車を使用した後,本件自動車を中古車として甲国の自動車販売会社D社に売却し,甲国内で本件自動車をD社に引き渡していた。
その後,A社は,D社から本件自動車を購入し,甲国内でその引渡しを受けていた。
出典:法務省「2021年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。