司法試験論文式過去問演習

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2019年 司法試験 論文式 租税法 第1問

問題

配点 50点

[租 税 法]

〔第1問〕(配点:50)

甲は,インテリア雑貨の輸入販売の事業を行う株式会社A(以下「A社」という。)の創業者であり,その代表取締役である。乙は甲の長男である。

乙は,平成26年3月にB大学商学部を卒業した後,A社に入社し,経理の事務を担当した。乙の給与は月額30万円であった。乙は,A社への入社に際しワンルームマンションを借り,甲とは生計を別にした独立した生活を始めた。乙は,A社での仕事になじめず,平成29年1月に,甲に対して,A社を退社したい旨,打ち明けた。甲は乙に「A社での勤務を続け,いずれは跡を継いでほしい。」と説得したが,乙の決意は固く,乙は平成29年3月31日にA社を退社し,同社の退職金規程に基づく退職金を受領した。

A社の退職金規程によると,3年間の勤務で受け取る退職金は微々たる金額であった。そのため,A社退社後の乙の生活を心配した甲は,乙の退職に際して,A社が従業員の福利厚生目的で保有していた,著名なリゾート地C町に所在する戸建別荘(以下,別荘の建物を「本件建物」,別荘の土地建物を併せて「本件不動産」という。)を,A社から乙に対して,本件不動産の帳簿価格3000万円で売却し,乙がそれを賃貸して得られる収入によって乙の生活の足しにできるようにしてやろうと考えた。そこで,A社は,取締役会決議を経た上で,平成29年3月31日に,本件不動産の売買契約を乙と締結し,同日,乙は,A社に対して,銀行からの借入金を原資として,売買代金3000万円を支払った。

本件不動産の時価は,近年のC町の地価高騰の結果,平成29年3月31日時点では4000万円にまで値上がりしていた。

乙は,平成29年5月1日から,本件不動産を,丙に対し,月額10万円で賃貸したところ,翌30年3月,C町で記録的な暴風雪が発生し,その結果,本件建物の屋根が損傷する被害が生じた。被害発生直前の本件建物の時価・帳簿価格はともに800万円であったが,本件建物の被害割合は5%であり被害額は40万円であった。乙は,本件建物について,損害に備えるための保険契約を締結していなかった。また,本件不動産以外には,土地建物などのみるべき財産を乙は所有していなかった。

以上の事案について,以下の設問に答えなさい。

〔設 問〕

1.A社の平成28年4月1日から平成29年3月31日までの事業年度の所得の金額の計算において,乙への本件不動産の売却に関して,益金の額への計上はどのようにすべきかにつき,関連する条文とその趣旨に触れつつ,益金となる金額とその理由を述べなさい。

2.A社の平成28年4月1日から平成29年3月31日までの事業年度の所得の金額の計算において,乙への本件不動産の売却に関して,損金の額への計上はどのようにすべきかにつき,関連する条文とその趣旨に触れつつ,損金となる金額とその理由を述べなさい。

3.乙の平成30年分の所得税に関して,乙の同年分の総所得金額,退職所得金額及び山林所得金額の合計額が330万円であった場合,暴風雪により発生した本件建物の被害について,所得税法上,どのように取り扱われるか,説明しなさい。なお,本件建物の被害に直接関連してなされた支出はない。

4.一般に,事業活動で生じた「損失」についての所得税法上の取扱いと法人税法上の取扱いとの最も特徴的な差異とその理由について,所得税法及び法人税法の関係条文を指摘した上で,簡潔に述べなさい。

(参照条文)

所得税法施行令

(災害の範囲)

第9条 法第2条第1項第27号(災害の意義)に規定する政令で定める災害は,冷害,雪害,干害,落雷,噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害,火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫,害獣その他の生物による異常な災害とする。

(生活に通常必要でない資産の災害による損失額の計算等)

第178条 法第62条第1項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)に規定する政令で定めるものは,次に掲げる資産とする。

一 競走馬(その規模,収益の状況その他の事情に照らし事業と認められるものの用に供されるものを除く。)その他射こう的行為の手段となる動産

二 通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味,娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味,娯楽,保養又は鑑賞の目的で所有する資産(前号又は次号に掲げる動産を除く。)

三 生活の用に供する動産で第25条(譲渡所得について非課税とされる生活用動産の範囲)の規定に該当しないもの

2 (後略)

(雑損控除の対象となる雑損失の範囲等)

第206条

(略)

3 法第72条第1項の規定を適用する場合には,同項に規定する資産について受けた損失の金額は,当該損失を生じた時の直前におけるその資産の価額(その資産が法第38条第2項(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)に規定する資産である場合には,当該価額又は当該損失の生じた日にその資産の譲渡があつたものとみなして同項の規定(その資産が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していたものである場合には,法第61条第3項(昭和27年12月31日以前に取得した資産の取得費等)の規定)を適用した場合にその資産の取得費とされる金額に相当する金額)を基礎として計算するものとする。

法人税法施行令

(特殊関係使用人の範囲)

第72条 法第36条(過大な使用人給与の損金不算入)に規定する政令で定める特殊の関係のある使用人は,次に掲げる者とする。

一 役員の親族

二 役員と事実上婚姻関係と同様の関係にある者

三 前二号に掲げる者以外の者で役員から生計の支援を受けているもの

四 前二号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

(過大な使用人給与の額)

第72条の2 法第36条(過大な使用人給与の損金不算入)に規定する政令で定める金額は,内国法人が各事業年度においてその使用人に対して支給した給与の額が,当該使用人の職務の内容,その内国法人の収益及び他の使用人に対する給与の支給の状況,その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの使用人に対する給与の支給の状況等に照らし,当該使用人の職務に対する対価として相当であると認められる金額(退職給与にあつては,当該使用人のその内国法人の業務に従事した期間,その退職の事情,その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの使用人に対する退職給与の支給の状況等に照らし,その退職した使用人に対する退職給与として相当であると認められる金額)を超える場合におけるその超える部分の金額とする。

出典:法務省「2019年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。