2018年 司法試験 論文式 国際関係法(私法系) 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
日本に在住する日本人Xは,絵画の収集を趣味としていた。Xは,甲国に旅行に行った際,たまたま訪れた画商Yの店で,甲国では著名な画家Pの作品(以下「本件絵画」という。)を見付けた。Xは,本件絵画を気に入り,Yに対し,「これを日本の自宅に飾りたい。」と言い,価格の交渉をし,その交渉もまとまったことから,甲国の公用語ではなく英語で記載された契約書に,Yと共に署名した(以下,この契約書により締結された売買契約を「本件売買契約」という。)。この契約書には,国際裁判管轄権及び準拠法に関する定めはなく,特定の国の法の条文への言及もなく,特定の国の法に特有な法律用語も使われていない。また,Yは,個人で事業を営んでおり,甲国に在住し,かつ,甲国に営業所を有する画商であって,日本には営業所及び財産を有さず,日本への渡航歴もない。
以上の事実を前提として,以下の設問に答えなさい。なお,各問は独立した問いである。
〔設問1〕
Xは,Yに対し本件絵画の代金を支払い,本件絵画を日本に持ち帰った。ところが,その後,Xが,甲国に在住する甲国絵画の専門家に問い合わせたところ,本件絵画はPの作品ではなく偽物であるとの回答を得た。そこで,Xは,Yに対して,本件売買契約は無効であるとして,本件絵画の代金の返還を求める訴え(以下「本件訴え」という。)を日本の裁判所に提起した。
〔小問1〕
本件訴えに関する国際裁判管轄権について論じなさい。
〔小問2〕
本件訴えについて日本の裁判所に国際裁判管轄権が認められるとして,本件売買契約の有効性に関する準拠法はいずれの国の法か。
なお,本件売買契約の方式については検討を要しない。
〔設問2〕
甲国民法には,当事者間における動産の所有権の移転については,売買契約だけでは足りず,その引渡しが必要である旨の定めがある。本件絵画については,甲国において,XY間において本件売買契約が有効に成立したが,その際,本件絵画の引渡しまでは行われず,日本で本件絵画の引渡しが行われることとなった。そこで,Yは,本件絵画について日本に向けて船便での配送の手配をした。
その後,Yは,Zから,本件絵画をXより高額で買い取りたいとの申出を受けたことから,本件絵画を取り戻したいと考えるに至った。
そこで,Yは,本件絵画の引渡しがなされていないことを理由として,本件絵画の所有権確認の訴えを日本の裁判所に提起した。この訴えの口頭弁論終結時において,本件絵画は,日本に向けて公海上を航行中の船舶に積載されている。この請求は認められるか。準拠法の決定過程を明らかにしつつ論じなさい。
なお,この訴えに関する国際裁判管轄権については検討を要しない。
出典:法務省「2018年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。