2017年 司法試験 論文式 租税法 第2問
問題
配点 50点〔第2問〕(配点:50)
Aは,自宅の近くに店舗を借りて日本料理店を経営するとともに,別に一棟の建物内に複数の区分建物(以下,併せて「本件各賃貸物件」という。)を所有し,本件各賃貸物件を賃貸して賃料を得ていた。Aは,B銀行から,上記日本料理店の事業資金,本件各賃貸物件の購入資金及び自宅の購入資金として,約3億円の借入れを行っていた。借入れに際しては,本件各賃貸物件及びAの自宅に抵当権が設定されるとともに,Aの配偶者であるCが連帯保証人となっていた。
Aの営む日本料理店は,マスコミにも取り上げられたことのある著名な店舗であったが,平成20年頃からの景気の悪化に加え,平成22年冬にA自身の過失により店舗内で火事を発生させたことから経営状態が悪化した。Aは,上記日本料理店の食材を納入しているD社から,平成24年末までに支援の趣旨で融資を受け,その後も細々と営業を継続していた。AのD社から受けた融資の合計額は約600万円となっていた。また,本件各賃貸物件についても,老朽化が進み,賃借人が相次いで退去したが,一物件のみ賃料を大幅に減額した上で賃貸を継続している状況にあった。AとCの生計は,市役所で非常勤職員として働いているCの月額15万円程度の給与収入により維持されていた。
Aは,平成24年からは,B銀行と交渉して借入金について元本の返済の猶予を受け,利息部分のみの支払を続けていたが,平成25年末からは利息の支払も滞るようになった。
平成27年12月1日,B銀行のAに対する貸付金元本及び利息合計の残高は,①本件各賃貸物件の購入資金に係るものにつき1億円,②日本料理店の事業資金に係るものにつき6000万円,③自宅の購入資金に係るものにつき4000万円の合計2億円であった(以下,これらの債権を併せて「本件債権」という。)。これを踏まえて,A及びCはB銀行との間で,同日,Aが,その所有する本件各賃貸物件及び自宅を売却するなどし,本件債権につき上記①から③までの各残高に応じて案分して充当することとして1億円を弁済することとし,これを停止条件としてB銀行が残りの1億円の債務を免除する旨の和解契約(以下「本件和解契約」という。)を締結した。A及びCには,本件各賃貸物件及び自宅以外にめぼしい財産はなかった。Aは,平成27年12月10日にB銀行に上記1億円を弁済し,B銀行は,残りの1億円について債務を免除した(以下,Aに対するこの債務の免除を「本件債務免除」という。)。
その後,Aが営む日本料理店は,外国人旅行者の間で評判となり,平成28年夏以降,経営状態が好転した。
以上の事案について,以下の設問に答えなさい。
〔設問1〕
本件債務免除により受ける経済的な利益の価額を,Aの各種所得の金額の計算上,総収入金額に算入すべきであるかについて,具体的な事実を評価した上で所得税法第44条の2の適用の有無を検討し,算入すべきとする場合には各種所得ごとにその金額を明らかにしなさい(ただし,同条第3項の要件は充足しているものとする。)。
なお,Aの日本料理店に係る事業及び本件各賃貸物件の賃貸業について,平成27年分の各種所得の金額の計算上生じた損失として,それぞれ500万円が発生していたものとする。
〔設問2〕
Aは,平成22年冬の火事により,自己所有の器具と備品の一部を焼失したが,Aの平成22年の事業所得の金額の計算上この損失の金額を必要経費に算入できるか。事業所得の金額の計算上必要経費を控除する理論的根拠に言及しつつ述べなさい。
〔設問3〕
B銀行は,本件和解契約の締結までには至らない場合に備え,本件債権につき次の1又は2の処理を検討していた。
1 本件債権を債権回収会社であるE社に1億円で譲渡する。
2 本件債権の評価換えをして,その帳簿価額を1億円に減額し(ただし,損金経理はしない。),1億円の評価損を計上する。
上記1及び2の処理について,法人税法上の取扱いの異同を述べなさい。
(参照条文)所得税法施行令
(固定資産の範囲)
第5条 法第2条第1項第18号(固定資産の意義)に規定する政令で定める資産は,たな卸資産,有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるものとする。
一 土地(土地の上に存する権利を含む。)
二 次条各号に掲げる資産
三 電話加入権
四 前三号に掲げる資産に準ずるもの
(減価償却資産の範囲)
第6条 法第2条第1項第19号(減価償却資産の意義)に規定する政令で定める資産は,棚卸資産,有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。
一~六 (略)
七 工具,器具及び備品(観賞用,興行用その他これらに準ずる用に供する生物を含む。)
八 (以下略)
出典:法務省「2017年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。