司法試験論文式過去問演習

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2016年 司法試験 論文式 知的財産法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

作家Xは,米国の作家Aが創作した「Days of the full-scale sprint like a tornado」という題号(以下「題号a」という。)の英語の世界的ベストセラー小説(以下「小説a」という。)につき,Aから日本語に翻訳する権利を得た。小説aは,恵まれない環境に育った少年が苦学を重ね,大企業に入社し,持ち前の馬力と攻撃的性格で並み居るライバルに競り勝ちついに大企業のトップとなるというサクセスストーリーである。Xは小説aを翻訳するに当たり,その大部分は直訳であるものの,日本人には分かりにくい英語の表現や各場面設定につき,独特の意訳をするなど創意工夫を凝らし,その結果,日本語の小説として原作にも負けない流ちょうで生き生きとした表現の小説(以下「小説b」という。)を完成させた。小説bは,題号aを直訳した「竜巻のごとく全力疾走した日々」との日本語の題号(以下「題号b」という。)を付した上,出版された。小説bのブックカバー(以下「ブックカバーb」という。)はXが自ら独自にデザインしたもので,青と白を基調とし,左下から右上に風が吹き抜けるようなしま模様とともに,金色の題号が中央で大きく渦を巻きながら天に昇るように描かれているものであった。

以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。

〔設 問〕

1.作家Yは,小説a及び小説bに描かれた内容を批評するとともに同小説の描く世界観を揶揄することを通じて,競争社会のゆがみを風刺する趣旨で,小説a及び小説bの全体の構成,各場面設定及び物語の展開の特色を一見して分かるように残しながら,主人公がライバルとの競争に競り負け最後には挫折するという内容の日本語の小説(以下「小説c」という。)を書き,これに「つむじ風のごとく疾走して転んだ日々」という題号(以下「題号c」という。)を付した上,これを自費出版した。ただし,小説cは,小説aの直訳としての日本語の表現において小説bと類似する部分があるものの,小説bでXが創意工夫を凝らした日本語の表現は使用していない。また,小説cのブックカバー(以下「ブックカバーc」という。)はYが自らデザインしたもので,ブックカバーbの色合い,構図及び文字の配置の特色が一見して分かるように残されており,左下から右上に風が吹き抜けるようなしま模様とともに,灰色の題号が中央で小さく渦を巻きながら徐々に消滅するように描かれていた。

Xは,Yに対し,小説c,題号c及びブックカバーcはXの著作権及び著作者人格権を侵害するものであるとして,小説c,題号c及びブックカバーcの複製・頒布の差止め及び損害賠償を求める訴訟を提起した。

Xはどのような主張をすることができるか。これに対するYの反論としてどのような主張が考えられるか。双方の主張の妥当性についても論じなさい。

2.⑴ 事業者Z1は,書籍の購入者の依頼により,同書籍をその購入者のタブレット端末で読めるように電子ファイル化するという有償のサービスを業とする者である。そのサービスの手順は次のとおりである。すなわち,まず,書籍を購入した利用者がZ1に書籍の電子ファイル化を申し込み,自ら購入した書籍をZ1に送付する,次に,Z1はその書籍を裁断して自ら管理するスキャナーで読み込んで電子ファイル化する,そして,Z1は,完成した電子ファイルを記録した電子記憶媒体を裁断した書籍とともに利用者に送付する,というものである。Z1は,上記の手順により,小説bの不特定多数の購入者の依頼に応じて小説bの電子ファイル化を続けている。

⑵ 事業者Z2は,小説bを自ら複数冊購入してそれらを裁断した上で,それを読み込む専用スキャナーが設置されている自社の店舗内の書棚に並べ,小説bを電子ファイル化したい不特定多数の利用者に,店舗外への持ち出しを禁止した上で裁断済みの小説bを貸し出し,それを利用者に上記店舗内のスキャナーで自ら電子ファイル化させ,その電子ファイルを利用者に取得させるという有償のサービスを業として提供している。

Xは,Z1及びZ2に対し,上記⑴及び⑵の行為はそれぞれXの著作権を侵害するものであるとして,それらの行為の差止め及び損害賠償を求める訴訟をそれぞれ提起した。これらの訴訟において,Xはどのような主張をすることができるか。これに対するZ1及びZ2の反論としてどのような主張が考えられるか。それぞれの主張の妥当性についても論じなさい。

出典:法務省「2016年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。