司法試験論文式過去問演習

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2015年 司法試験 論文式 倒産法 第2問

問題

配点 50点

〔第2問〕(配点:50)

次の事例について,以下の設問に答えなさい。

【事 例】

食品製造会社であるA株式会社(以下「A社」という。)は,平成26年2月頃,販売する製品に虫の死がいが入っていたことが発見されたことから,生産を一時停止し,販売した製品を回収しなければならない事態となり,同年3月末の借入債務の返済及び仕入代金の支払のために発行した約束手形の決済等ができない見通しとなった。そこで,A社は,同月25日に再生手続開始の申立てをしたところ,同日,監督命令を受け,同年4月2日,再生手続開始の決定を受けた。

〔設 問〕 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。

1.A社は,再生手続開始の決定時において,現に稼働している工場及びその敷地(以下,まとめて「工場不動産」という。)並びに使用していない旧工場の跡地(以下「本件土地」という。)を所有していた。なお,工場不動産の評価額は3000万円,本件土地の評価額は5000万円であり,本問を通じて,各評価額については争いがないものとする。

A社は,B銀行からの2億円の借入債務を被担保債権として,同銀行のために,工場不動産及び本件土地に第1順位の抵当権(共同抵当)を設定し,その登記をするとともに,金融業者C社からの1000万円の借入債務を被担保債権として,同社のために,本件土地に第2順位の抵当権を設定し,その登記をした。そして,これらの抵当権は再生手続開始の決定時において存続していた。

A社の事業計画においては,本件土地は処分する一方,工場不動産は確保して事業を継続することとされており,本件土地の売却代金及び事業収益を再生債権の弁済等(別除権協定に基づく債務の弁済を含む。)に充てることが予定されていた。A社は,その計画の実現のため,B銀行との間で別除権協定を締結し,次のとおり合意した。

1 A社は,B銀行に対し,本件土地及び工場不動産の評価額の合計に相当する8000万円を次のとおり分割して支払う。

① 再生計画認可決定の確定後1か月以内に500万円

② 同確定後6か月以内に5000万円

③ 同確定後1年以内に500万円

④ 同確定後2年以内に500万円

⑤ 同確定後3年以内に500万円

⑥ 同確定後4年以内に500万円

⑦ 同確定後5年以内に500万円

2 1の各支払をA社が遅滞しない限り,B銀行は,本件土地及び工場不動産に設定された抵当権を実行しない。

3 A社が1の各支払を遅滞なく完了したときは,B銀行は,本件土地及び工場不動産に設定された抵当権を全て抹消する。ただし,1の各支払の完了前であっても,1①及び②の支払が遅滞なく完了したときは,B銀行は,本件土地について設定された抵当権を抹消する。

なお,A社は,本件土地の売却代金を上記1②の5000万円の支払に充てることを予定しており,上記別除権協定の締結に先立ち,監督委員の同意を得て,D社との間で,本件土地に設定された各抵当権の抹消を条件に本件土地を5000万円で売買する契約を結んでいた。このため,A社及びB銀行は,上記3ただし書の規定を設け,上記1①及び②の支払が遅滞なく完了した場合には,本件土地について設定された抵当権を抹消することとしたものである。

一方,A社は,C社に対しては,本件土地の価値に余剰がないことを考慮し,少額の支払と引換えに抵当権を抹消することを要請したが,C社はこれに応じなかった。そのため,A社の再生計画は平成26年10月に認可されたにもかかわらず,C社の抵当権に関しては,抹消に関する合意が成立していなかった。

A社は,C社の抵当権を抹消することができないとすれば,B銀行との別除権協定に基づく債務を履行することができないために工場不動産について抵当権が実行され,その結果,再生計画の履行ができなくなるのではないかと考え,本件土地について担保権消滅の許可の申立てをすることとした。なお,担保権消滅の許可の申立てが認められた場合に必要となる資金については,D社から融資を受け,売買代金と相殺する予定であった。

この場合,A社による担保権消滅の許可の申立てが認められるかどうかについて,論じなさい。

2.A社の再生計画案は可決され,平成26年10月31日に再生計画認可の決定がなされ,その認可決定は,同年11月28日に確定した。A社の再生計画の権利変更の定めは,確定再生債権の10パーセントを5回に均等分割し,これを平成27年から平成31年まで各年3月末日限り支払い,その余は再生計画認可の決定の確定時に免除を受けるという内容のものであった。

同認可の決定の確定後,E及びFは,A社に対し,以下のとおり,A社に対する債権の弁済を求めた。

Eは,平成20年創業の個人事業者であり,同年からA社に食品原料の納入を行っており(継続的に納入する義務を負っていたわけではないものとする。),A社の再生手続開始の決定当時,A社に対し,2か月分(平成26年2月分及び同年3月分。ただし,同月20日までに納入済みであった。)の未払売掛金債権100万円(同年2月分として60万円,同年3月分として40万円)を有していた。A社及びEは,同年2月のA社製品への虫混入事件の発覚以降,A社の要請に基づき,債務の繰延べに関する協議を行っており,A社が再生手続開始の申立てをした時点では,合意内容はほぼ固まりつつあった。ところが,A社が同申立てをしたことから,協議は中断され,再生手続の開始に伴い,Eに対して,A社の再生手続開始の決定に関する通知がされた。Eは,同年2月分の売掛金債権については,再生手続において,債権届出を行ったが,同年3月分の売掛金債権(以下「本件売掛金債権」という。)については,もともとの弁済期が再生手続開始決定後の同年4月15日であったため,再生手続の対象にならないと考え,届出をしなかった。A社も,食品原料の仕入先をEから他の事業者に切り替えていたこともあり,本件売掛金債権については失念し,認否書に記載しなかった。そのため,Eの本件売掛金債権は,再生債権者表に記載されず,また再生計画においても変更されるべき権利として明示されなかった。その後,Eは,平成27年1月,A社に対し,本件売掛金債権40万円の支払を求めた。

Fは消費者であり,A社製造の食品をインターネット経由で継続的に購入していたところ,平成26年3月初旬,原因不明の発しんが出て病院で治療を受けた。その後,同年12月,A社が製造した食品を摂取した消費者に発しん等の健康被害が複数発生しているとの報道がされ,検査の結果,Fに生じた発しんもA社の食品を摂取したことが原因であることが判明した。そこで,Fは,A社に対し,発しんの治療費等を含む損害の賠償として100万円の支払を求めたが,A社は,Fの主張する損害賠償請求権(以下「本件損害賠償請求権」という。)は,再生債権者表に記載されず,また再生計画においても変更されるべき権利として明示されていないために,Fの求めには応じられないと回答してきた。このため,Fは,平成27年1月,A社に対し,本件損害賠償請求権に基づき,100万円の支払を求めた。

上記事例において,Eの有する本件売掛金債権及びFの有する本件損害賠償請求権が民事再生法上どのように取り扱われるかについて,論じなさい。

出典:法務省「2015年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。