2012年 司法試験 論文式 倒産法 第1問
問題
配点 50点[倒 産 法]
〔第1問〕(配点:50)
次の事例について,以下の設問に答えなさい。
【事 例】
A株式会社(以下「A社」という。)は,コンピュータ・ソフトウェアの製造及び販売を業とする会社であり,平成20年頃には,年間で50億円を超える売上げを計上するなど,順調な業績を維持していたが,平成22年末頃以降は,徐々にその経営が悪化し,平成23年9月5日には,破産手続開始の申立てをするに至り,同月15日,破産手続開始の決定を受け,弁護士Xが破産管財人に選任された。
〔設 問〕 以下の1及び2については,それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.A社は,平成22年12月頃,売上げの半分以上を占めていた取引先が破綻し,当該取引先からの支払が突然途絶えたため,以後は,その資金繰りが悪化した。
そこで,A社は,メインバンクを含む金融機関に新規の融資を求めたものの,十分な額の融資を得ることができそうになかったため,取引先からの紹介を受け,いわゆる事業再生ファンドであるBアセット株式会社(以下「B社」という。)と交渉した結果,将来の他社とのM&Aを念頭に置いてB社から最大で20億円をめどに融資を受けられることとなり,まず,平成23年2月1日に5億円の融資を受ける旨の契約をB社との間で締結し,その融資は,同日,実行された(以下においては,利息については考慮せず,当該契約に基づくA社の債務額は,5億円とする。)。この契約においては,A社は,同年8月1日をもって,借入金を返済する旨の条項が含まれていた。
A社によるスポンサー企業等の開拓は,その後も精力的に続けられたが,業界の景気の更なる悪化などのため,適当なスポンサー企業等を獲得するには至らなかった。その結果,A社の経営状況は,同年6月頃から深刻さを増したものの,B社からの上記の5億円の融資金の残りを利用することができたため,一部の金融機関に対する債務の返済計画を相手方の同意を得て変更した以外は,全ての債務を約定どおり弁済していた。
一方,B社は,同年6月頃には,A社への上記の融資は失敗であり,その回収に向けた準備が必要であるとの判断に至ったことから,当該融資の段階でその担保のために抵当権の設定を受けていたA社所有の不動産の評価を進めたところ,2億円しか満足を受けられる見込みがないことが明らかになった。そこで,同年7月25日,B社の代表取締役らがA社を訪れ,5億円の融資の返済期日を同年9月1日に変更するとともに,その見返りとして,A社の有する複数の売掛金債権(全てが優良債権であり,その評価額は,2億円であった。)を追加担保(譲渡担保)としてB社に差し入れることを求めた。A社の代表取締役であるCは,同年7月25日,やむを得ず,これに応じて,当該売掛金債権について債権譲渡担保を設定し(以下「本件債権譲渡担保設定行為」という。),A社とB社は,同月28日に債権譲渡登記を経由した。A社は,この当時,同年8月中旬までに弁済期が到来する債務を幾つか負担し(この他には,同年8月中に弁済期が到来する債務はなかった。),その総額は,1億円に達していたが,B社に対する債務の支払の猶予を受けたことで余裕ができたため,何とか,これらの債務を全額決済することができた。ただし,CらA社の経営陣は,同年7月末時点で,A社の余裕資金はぎりぎり1億円であり,他方で,同年8月中に新たな弁済資金の調達の見込みがなかったため,同年8月中旬には弁済資金が枯渇するものと予想していた。そして,実際にも,その予想どおりに資金状況は推移し,返済期日が同年9月1日に変更されたB社に対する上記の債務の支払をすることができなかった。
以上の場合において,A社の破産手続開始後,A社がB社のためにした本件債権譲渡担保設定行為をXが否認することができるかどうかについて,予想されるX及びB社の主張を踏まえて,論じなさい。
2.A社は,平成23年5月27日,株主総会を開催し,①取締役としてDらを選任すること,②定款を変更して,本店を移転すること,③1株当たり5000円の配当をすることをそれぞれ決議した。ところが,A社の株主Eは,同年7月29日,当該株主総会の決議の取消しの訴えを提起した。
なお,この訴訟においては,DがA社を代表して訴訟追行をしていた。
以上の場合において,当該訴訟は,A社に対する破産手続開始の決定によってどのような影響を受けるかについて,論じなさい。
出典:法務省「2012年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。