2007年 司法試験 論文式 国際関係法(公法系) 第1問
問題
配点 50点[国際関係法(公法系)]
〔第1問〕(配点:50)
次の文章を読んで,後記の設問に答えなさい。
A国は,長年,経済不振にあえぎ,また,天候不順から飢饉も起こり,餓死する者も出るような事態になった。A国民の甲は,日々の食糧も事欠く状況になったため,A国をひそかに脱出し,B国に密入国してB国内で働き始めるとともに,B国内でA国の現政権打倒運動に参加した。数年後,B国の入国管理当局は,甲の密入国を探知して身柄を拘束し,B国法に基づいてA国への退去強制処分を決定した。甲は,B国裁判所へ出訴し,退去強制処分の取消しを求めた。
B国は難民の地位に関する条約及び難民の地位に関する議定書に加入しており,両条約を実施するために,議会で法律を制定して難民認定手続を置いているが,甲はB国で難民申請を行っておらず,したがって,B国で難民認定されていない。また,A国は密出国者に対して,死刑を含む厳罰に処するとの刑法を制定している(ただし,運用状況は不明)。
〔設 問〕
1. B国では,日本と異なり,難民の地位に関する条約(難民の地位に関する議定書を含む。以下同じ。)のB国における位置付け上,甲がB国裁判所において難民の地位に関する条約違反の主張をしても,そのような主張は法的考慮の対象にならない場合があり得る。なぜ,B国において,このような可能性が考えられるかを説明しなさい。
2. B国裁判所において,甲は,「甲の庇護を受ける権利(庇護権)を侵害するからB国の退去強制処分は違法である。」と主張した。甲の主張する庇護権と,難民該当性の関係について説明しなさい。
3. B国政府は,「甲がB国の難民認定手続において難民申請を行っていないから難民に該当しない。したがって,難民該当性を前提とする難民の地位に関する条約上の義務に抵触することはない。」と主張した。この主張の是非を論じなさい。
4. 甲が難民の地位に関する条約上の難民であるかどうかについて,論じなさい(「甲がB国の難民認定手続において難民申請を行っていないから難民には該当しない。」との主張はここではできないことを前提としなさい。)。
なお,2. 〜4. については,難民の地位に関する条約についての甲の主張が,B国裁判所において法的考慮の対象となり得ることを前提とする。
出典:法務省「2007年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。