司法試験論文式過去問演習

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2006年 司法試験 論文式 知的財産法 第1問

問題

配点 50点

[知的財産法]

〔第1問〕(配点:50)

Xは,糖尿病のインシュリン治療等に使用される注射器や注射方法に関する研究開発の結果,注射液の調整方法についての発明(以下「X発明」という。)をし,X発明について特許権(以下「X特許権」という。)を有している。X発明は,注射器内に二つの室を設け,薬剤を一方の室に,薬剤を溶解する液体を他方の室にそれぞれ分離収納し,注射する際に,注射器を操作して,薬剤を収納した室に薬剤を溶解する液体をゆっくりと流入させることによって敏感な薬剤(注)を簡易に調整する注射液の調整方法に関するものである。

X発明は,薬剤を収納した室に薬剤を溶解する液体を流入させて注射液を調整する際に「注射器がその注射針部分を上にしてほぼ垂直に保持された状態」にすることを構成要件の一つ(以下「構成要件A」という。)としている。

Yは,薬剤とこれを溶解する液体とを二つの室にそれぞれ分離収納した注射器(以下「Y注射器」という。)を製造し,医師向けに販売している。Y注射器には,「注射器がその注射針部分を水平からやや上向きにして保持された状態」で注射液の調整を行うことを指示する取扱説明書が付されており,医師はこの指示どおりにY注射器を使用している。

Y注射器を用いた注射液の調整方法は,構成要件Aを除くX発明の他の構成要件のすべてを充足する。YがY注射器に上記取扱説明書を付したのは,以前に注射器を垂直に近い状態に保持して注射液の調整を行うことを指示していたところ,XからX特許権を侵害するという警告を受けたためであるが,Y注射器を用いて上記取扱説明書に従って調整作業を行っても特段の不都合は生じていない。

以上の事実関係を前提として,以下の各設問に答えよ。

1. X発明の構成要件Aの技術的意義が,注射液を調整する際に針先から液が漏れないようにする点にあり,薬剤を収納した室に液体を流入させることには関係しないものであるとき,Yの行為は,どのような場合にX特許権の侵害となるか。

2. X発明の構成要件Aが,出願当初の特許請求の範囲には記載されておらず,拒絶理由通知を受けてされた補正により付加されたものであった場合において,構成要件Aが,①拒絶理由通知における拒絶理由を回避するために付加されたものであったときと,②拒絶理由を回避するために付加されたものではなかったときとで,YによるX特許権の侵害の成否につき差異を生じるか。

3. ①上記の事実関係のようにY注射器を使用するのが医師である場合と,②Y注射器を使用するのが専ら患者本人である場合とで,YによるX特許権の侵害の成否につき差異を生じるか。

(注) 薬剤の中には,機械的な力が加わることで品質が劣化したり,溶解したときに変性する傾向があるものが存在する。ここでは,このような薬剤を「敏感な薬剤」と呼ぶ。

出典:法務省「2006年司法試験論文式試験問題」。原本PDFから本文・表・図を抽出し、字下げ・下線・枠などの体裁を保ったまま、画面の幅に合わせて折り返しています。