第16問配点 3点
次の文章は,食品衛生行政を担当する若手公務員甲とベテラン公務員乙との会話である。アからエまでの下線部の各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからエの順に[№31]から[№34])
(参照条文)食品衛生法
第28条厚生労働大臣,内閣総理大臣又は都道府県知事等は,必要があると認めるときは,営業者その他の関係者から必要な報告を求め,当該職員に営業の場所,事務所,倉庫その他の場所に臨検し,販売の用に供し,若しくは営業上使用する食品,添加物,器具若しくは容器包装,営業の施設,帳簿書類その他の物件を検査させ,又は試験の用に供するのに必要な限度において,販売の用に供し,若しくは営業上使用する食品,添加物,器具若しくは容器包装を無償で収去させることができる。2(略)3第1項の規定による権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。4(略)
第75条次の各号のいずれかに該当する者は,これを50万円以下の罰金に処する。
一第28条第1項(中略)の規定による当該職員の臨検検査又は収去を拒み,妨げ,又は忌避した者
二第28条第1項(中略)の規定による報告をせず,又は虚偽の報告をした者三,四(略)
甲「行政調査には,調査の相手方に任意の協力を求める調査(以下「任意調査」という。),刑罰等の制裁による間接的な強制力のみを伴う調査(以下「間接強制調査」という。)及び直接的物理的な強制力を行使し得る調査(以下「直接強制調査」という。)に分類することができるとのことですが,食品衛生法(以下「法」という。)第28条による調査は,いずれに当たるのでしょうか。」
乙「(ア)法第75条からすれば,間接強制調査ができるのは,間違いないところだね。」[№31]甲「間接強制調査においては,調査の相手方に対し,協力を拒んだら法第75条により刑罰が科されると警告すれば,調査に協力させることが容易になるのではないかと思いますが,このようなやり方には問題はないでしょうか。」
乙「(イ)そのようなやり方をすると,法第28条第3項違反になるだろう。」[№32]甲「間接強制調査が認められている場合には,直接強制調査をすることはできないのでしょうか。」
乙「その点については議論の余地があるが,仮に直接強制調査が認められるとしても,営業者等への報告の要求と,臨検検査及び食品等の収去とを,区別して考える必要があると思うよ。(ウ)臨検検査及び収去と比較すると,報告の要求は,その性質上,直接的物理的強制になじまないだろう。」[№33]甲「直接強制調査が可能な場合があるとしたら,憲法第35条により,裁判官の発する令状が必要になるのではないでしょうか。法には,そのような手続について定めがないのが気になるのですが。」
乙「(エ)所得税法による検査については,法律上,裁判官の発する令状が要件とされていないが,このことが憲法第35条に違反するかどうかが争われた事例において,最高裁判所は,強制の程度が直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達していないことを考慮要素の一つとして,憲法違反ではないという判断を下している。判例が,強制の程度以外にどのような点を考慮しているかも考えた上で,法第28条第1項による調査について検討する必要がありそうだね。」[№34]