第32問配点 4点
次の【事例】に関する訴因の特定,変更等について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,判例に照らして,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[№58]から[№62])
【事 例】Vの死体が発見され,司法解剖の結果,Vの死因が頸部圧迫による窒息であることが判明した。
その後,警察は,甲及び乙が共謀してVを殺害した事実により,甲を逮捕したが,乙は逃亡してその所在が判明しなかった。甲は,取調べに対し,自分はVの殺害とは無関係である旨供述した。
捜査を尽くしたところ,検察官は,甲及び乙が共謀してVを殺害し,殺害の実行行為者が甲であると認定したが,犯行日時については,「平成○年3月15日ころから同月18日ころまでの間」,犯行場所については,「H市内又はその周辺」,犯行方法については,「何らかの方法で頸部を圧迫した」としか認定できなかった。そのため,検察官は,甲の勾留満期日に,以下の<公訴事実>で甲を起訴した。
<公訴事実>被告人甲は,乙と共謀の上,平成○年3月15日ころから同月18日ころまでの間,H市内又はその周辺において,Vに対し,殺意をもって,何らかの方法でVの頸部を圧迫し,よって,そのころ,同所付近において,Vを頸部圧迫により窒息死させて殺害したものである。
【記 述】
ア. <公訴事実>の「平成○年3月15日ころから同月18日ころまでの間」,「H市内又はその周辺」,「何らかの方法でVの頸部を圧迫し」という記載は,日時,場所,方法等の表示が概括的なものにとどまるが,検察官において,起訴当時の証拠に基づき,できる限り日時,場所,方法等をもって殺人の罪となるべき事実を特定して訴因を明示したものと認められるから,訴因の特定に欠けるところはない。[№58]
イ. 検察官は,殺人罪の共同正犯の訴因につき,その実行行為者がだれであるかを明示しなければならないので,実行行為者を甲とする記載がない<公訴事実>は,訴因の特定に欠ける。[№59]
ウ. 共謀共同正犯における共謀の日時,場所,内容等は訴因の明示に不可欠であるので,それらの記載がない<公訴事実>は,訴因の特定に欠けるため,裁判所は,検察官に釈明を求めるまでもなく,公訴棄却の判決をすることができる。[№60]
エ. 裁判所は,<公訴事実>の「殺意」を認定することができないと判断した場合,傷害致死の事実が当初の訴因中に含まれていて黙示的に主張されていると解されるときであっても,訴因変更の手続を経ることなく,傷害致死の事実を認定することはできない。[№61]
オ. 検察官が,<公訴事実>につき,「・・・殺意をもって,被告人甲が,何らかの方法で・・・」と殺害の実行行為者を甲と特定する旨の訴因変更をした後,裁判所が,その実行行為者につき,「被告人甲又は乙あるいはその両名において」と択一的に認定するには,必ず訴因変更の手続を経なければならず,その手続を経ないで認定した場合には訴訟手続の法令違反がある。[№62]